「病院に労働組合があるけど、何をしているのかわからない」
「組合費を払っているけど、自分にどんなメリットがあるの?」
「夜勤手当を上げてほしいと思ったら、組合に相談するもの?」
「看護協会や看護連盟とは何が違うの?」
看護師として働いていると、「労働組合」という言葉を聞くことがあります。
病院によっては入職時に説明を受けたり、給与明細から組合費が引かれていたり、賃上げや手当に関する要望書を見かけたりすることもあるでしょう。
一方で、
「組合=ストライキをする組織」
「自分にはあまり関係ない」
というイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、労働組合が扱うテーマは、看護師の日常にかなり近いものです。
たとえば、
- 基本給
- 夜勤手当
- オンコール手当
- 残業
- 休憩
- 有給休暇
- 人員配置
- 育児・介護との両立
- ハラスメント
- 勤務制度
などです。
厚生労働省では、労働組合を、労働者が主体となって自主的に組織し、労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目指す団体としています。
つまり労働組合は、
「個人では伝えにくい働き方や給料の問題を、労働者側から職場と話し合うための仕組み」
と考えるとわかりやすいです。
この記事では、看護師が知っておきたい労働組合の基本、団体交渉、組合活動、加入前に確認したいことを、初心者向けに整理します。
関連記事:看護師が知っておきたい制度・法律・団体の基本|働き方とお金を守る入門
この記事でわかること
この記事では、以下の内容を解説します。
- 労働組合とは何か
- 看護師のどんな問題を扱うのか
- 団体交渉とは何か
- 労働協約とは何か
- 看護協会・看護連盟との違い
- 労働組合へ加入するメリットと注意点
- 病院に労働組合がない場合の考え方
- 組合へ相談するときに準備したいこと
結論:労働組合は「働く条件」を職場と話し合うための組織
最初に結論です。
労働組合の主な役割は、
賃金や労働時間など、働く条件について労働者側から使用者と話し合うこと
です。
日本では、労働者に次の3つの権利が保障されています。
- 団結権
- 団体交渉権
- 団体行動権
これらを「労働三権」と呼びます。
難しい言葉に見えますが、イメージとしては次のようになります。
団結権
働く人が集まって、労働組合をつくったり加入したりする権利です。
団体交渉権
労働組合として、病院などの使用者と労働条件について交渉する権利です。
団体行動権
要求を実現するために、一定の範囲で団体として行動する権利です。
看護師にとって特に身近なのは、団体交渉です。
給料や夜勤手当、人員配置、勤務制度などについて、個人ではなく組合として病院側と話し合うことができます。

看護師の労働組合は何をするの?
労働組合が扱う内容は、病院や組合によって異なります。
ただし、看護師に関係しやすいテーマとしては、次のようなものがあります。
給料・手当
- 基本給
- ベースアップ
- 夜勤手当
- オンコール手当
- 年末年始手当
- 特殊勤務手当
- 賞与
- 退職金
労働時間
- 残業
- 前残業
- 休憩
- 夜勤回数
- 連続勤務
- オンコール
- 勤務間隔
休暇・働き方
- 有給休暇
- 育児休業
- 介護休業
- 短時間勤務
- 夜勤免除
- 希望休
職場環境
- 人員配置
- ハラスメント
- 業務負担
- 安全衛生
- 福利厚生
つまり、労働組合は看護師の給料だけを扱う組織ではありません。
「安心して働き続けられる職場をどうつくるか」
も重要なテーマになります。

団体交渉とは?
労働組合を理解するうえで重要なのが、団体交渉です。
団体交渉とは、労働組合が労働者を代表して、使用者と賃金や勤務条件などについて話し合うことです。
たとえば、
「夜勤手当を見直してほしい」
「オンコール待機の負担に対する手当を改善してほしい」
「人員不足によって休憩が取れていない」
といった問題を、個人ではなく労働組合として病院側へ伝えます。
労働組合法では、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否することは禁止されています。
ただし、
団体交渉をすれば、組合側の要求が必ず通る
という意味ではありません。
病院側にも経営状況や人員配置上の事情があります。
そのため、
組合側が要求を出す
↓
病院側が回答する
↓
理由や資料を確認する
↓
双方が条件を話し合う
というやり取りを重ねていくことになります。
たとえば夜勤手当を改善したい場合
夜勤手当を例に考えてみましょう。
看護師個人が、
「夜勤が大変なので、手当を上げてください」
と病院へ言っても、個人の要望として終わってしまうことがあります。
一方、労働組合なら、
- 他施設の夜勤手当
- 看護師確保の状況
- 夜勤者数
- 離職状況
- 病院経営
- 診療報酬改定
- 職員アンケート
などを整理して、労働条件の改善要求として交渉することができます。
もちろん、最終的に増額されるかは交渉次第です。
ただ、
「なんとなく手当が低い」から、「具体的な根拠をもとに話し合う」へ変えられる
ことが、労働組合の役割の一つです。
関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説
労働協約とは?
団体交渉の結果、労働組合と使用者が労働条件などについて合意すると、労働協約を締結することがあります。
少し難しい言葉ですが、
「労働組合と使用者が話し合って決めたルールを文書にしたもの」
と考えるとわかりやすいです。
たとえば、
- 賃金
- 手当
- 労働時間
- 休日
- 組合活動
- 団体交渉のルール
などについて取り決めることがあります。

労働組合に入っていると不利益を受ける?
「組合活動をすると職場から嫌われるのでは?」
と心配する人もいるかもしれません。
労働組合法では、労働組合への加入や正当な組合活動を理由に、解雇などの不利益な取扱いをすることは禁止されています。
また、
- 労働組合をつくることへの妨害
- 正当な理由のない団体交渉拒否
なども「不当労働行為」として禁止されています。
不当労働行為があった場合には、労働組合や労働者が労働委員会へ救済を申し立てる制度があります。
ただし、実際の職場トラブルは個別事情によって判断が変わります。
「組合員だから何をしてもよい」ということでもありません。
問題が起きた場合には、労働組合や労働委員会、専門家へ相談することが大切です。
看護協会・看護連盟・労働組合は何が違う?
看護師が混乱しやすいのが、
- 日本看護協会
- 日本看護連盟
- 労働組合
の違いです。
役割はそれぞれ異なります。
日本看護協会
看護職の資格を持つ人が自主的に加入する職能団体です。
研修、看護の質向上、政策提言、キャリア支援など、看護職全体に関わる活動を行っています。
日本看護連盟
看護政策を政治の場で実現するための活動を行う団体です。
看護職の声や看護政策を政治の場へ届ける役割があります。
労働組合
自分が働く職場などの賃金・労働時間・労働条件について、使用者と交渉する労働者の団体です。
ざっくり分けると、
看護協会:看護職全体・専門職としての活動
看護連盟:看護政策を政治へ届ける活動
労働組合:自分たちの労働条件を使用者と話し合う活動
と整理するとわかりやすいです。

労働組合に加入するメリット
労働組合へ加入するメリットとしては、次のようなものがあります。
1. 個人では言いにくい問題を相談できる
給料、残業、異動、ハラスメントなどは、上司へ直接相談しにくいことがあります。
組合という窓口があることで、相談先が一つ増えます。
2. 個人の悩みを職場全体の問題として考えられる
たとえば、
「私だけ休憩が取れない」
と思っていても、調べてみると部署全体で同じ問題が起きていることがあります。
組合が職員の声を集めることで、個人の問題から職場全体の課題として整理できます。
3. 労働条件について病院と団体交渉できる
賃金や労働時間などについて、労働者側から病院へ交渉できます。
4. 労働制度を知るきっかけになる
組合活動を通じて、
- 賃金規程
- 就業規則
- 労働基準法
- 診療報酬
- 病院経営
などを知る機会が増える場合があります。
制度を知ることは、自分の給料や働き方を考えるうえでも役立ちます。
一方で注意したいこともある
労働組合は、加入すれば自動的にすべての問題が解決するものではありません。
加入前には次の点を確認しておきましょう。
組合費
組合によって会費は異なります。
毎月いくら支払うのか、そのお金がどのような活動に使われているのか確認してみましょう。
活動内容
- 団体交渉
- 職員アンケート
- 会議
- 学習会
- 福利厚生活動
など、活動内容は組合によって違います。
自分がどこまで参加する必要があるか
役員・委員になる場合や、会議への参加など、活動負担が生じることがあります。
組合の方針
どのような問題を優先しているのか、自分の考えと大きく違わないかも確認したいところです。
労働組合は、
「入った方が絶対得」でも「入る意味がない」でもありません。
活動内容と組合費、自分が求める支援を確認して判断することが大切です。
病院に労働組合がない場合は?
勤務先に病院内の労働組合がない場合もあります。
その場合でも、企業の枠を超えて地域単位などで組織され、個人で加入できる「合同労組」「地域ユニオン」などがあります。
ただし、組織によって、
- 対象地域
- 対象職種
- 組合費
- 支援内容
- 活動方針
は異なります。
加入を検討する場合は、公式情報を確認しましょう。
公立病院の看護師は少し注意
地方自治体などに公務員として勤務している看護師については、一般企業の労働者とまったく同じ制度になるとは限りません。
公務員などについては特別な法制度があり、労働三権の一部が制限される場合があります。
また、「公立病院」という名称でも、
- 地方自治体直営
- 地方独立行政法人
などによって、職員の身分や適用される制度が異なる場合があります。
公立・公的病院で働いている場合は、自分の雇用上の身分と勤務先の制度を確認してください。
労働組合へ相談する前に整理したいこと
「夜勤手当について相談したい」
「残業が申請できない」
と思ったとき、まず事実を整理しておくと相談しやすくなります。
1. 何に困っているか
たとえば、
「夜勤手当が低い」
だけではなく、
「夜勤1回○円で、○年間改定されていない」
など具体的に整理します。
2. 記録を確認する
- 給与明細
- 勤務表
- タイムカード
- 残業申請
- 就業規則
- 賃金規程
などを確認します。
3. 自分だけの問題か確認する
同じ部署や職種で同じ問題が起きているか確認します。
4. どうしてほしいかを考える
「不満がある」だけではなく、
- 手当を見直してほしい
- 勤務時間内に委員会を行ってほしい
- 休憩未取得を記録できるようにしてほしい
など、改善案まで考えられると話し合いやすくなります。
関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説

労働組合を知ることは「職場と戦うこと」ではない
労働組合について説明すると、
「病院と対立するための組織なの?」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、本来の目的は、常に使用者と対立することではありません。
働く側と病院側で、
- どこに問題があるのか
- 何が改善できるのか
- どこまでなら実現できるのか
を話し合うための仕組みでもあります。
看護師が働き続けられなければ、病院にとっても人材確保が難しくなります。
看護師が働き続けやすい職場をつくることは、病院側にも無関係な話ではありません。
まとめ
労働組合は、少し硬く感じる存在かもしれません。
しかし、扱っている内容は看護師の日常と深く関係しています。
この記事のポイントをまとめます。
- 労働組合は労働条件の維持・改善を目指す労働者の団体
- 労働者には団結権・団体交渉権・団体行動権が保障されている
- 看護師では基本給、夜勤手当、残業、休暇、人員配置などがテーマになる
- 労働組合は病院と団体交渉を行うことができる
- 正当な理由なく団体交渉を拒否することは禁止されている
- 組合加入や正当な活動を理由とする不利益取扱いも禁止されている
- 看護協会・看護連盟・労働組合は、それぞれ役割が違う
- 病院内に組合がなくても、個人加盟型の労働組合がある
- 加入前には組合費・活動内容・参加負担などを確認する
- 公務員などは制度が異なる場合がある
労働組合に加入するかどうかは、それぞれの職場や考え方によって変わります。
大切なのは、
「組合に入るべきか」だけを考えるのではなく、「自分の職場で働き方を改善する仕組みがどこにあるのか」を知っておくこと
です。
給料や手当、残業、勤務制度に疑問を感じたとき、相談できる場所を知っているだけでも選択肢は増えます。
まずは、自分の勤務先に労働組合があるのか、どのような活動をしているのかを確認するところから始めてみましょう。
関連記事:看護師が知っておきたい制度・法律・団体の基本|働き方とお金を守る入門
関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説
注意書き
本記事は2026年8月時点の公的情報をもとに、一般的な制度理解を目的として作成しています。
労働組合の加入条件、組合費、活動内容、交渉範囲などは組合によって異なります。また、公務員等では一般の労働者とは異なる法制度が適用される場合があります。
個別の労働問題については、所属する労働組合、労働委員会、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、弁護士、社会保険労務士などへ確認してください。
参考情報・参考サイト
- 厚生労働省:労働組合
- 中央労働委員会:不当労働行為救済制度
- e-Gov法令検索:労働組合法
- 厚生労働省・中央労働委員会:団体交渉に関する情報
- 日本看護協会
- 日本看護連盟

