看護研究の自由記載アンケートを整理する方法|コメントの分類・カテゴリー化・結果のまとめ方

看護研究
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看護研究や院内学習会のアンケートで、自由記載欄を作ったものの、回答が集まった後に困っていませんか。

  • コメントを読んでも、どう整理すればよいかわからない
  • 似た回答をまとめたいが、分け方に自信がない
  • 良い意見と悪い意見を数えるだけでよいのかわからない
  • 自由記載の内容を結果にどう書けばよいかわからない
  • ChatGPTに分類してもらってよいのか迷う
  • 回答者が特定されないか心配

選択式の回答であれば、人数や割合を集計できます。

一方、自由記載には、

「具体例があってわかりやすかった」
「説明が少し早かった」
「実技練習の時間を増やしてほしい」

といった文章が並ぶため、そのままでは結果として示しにくいことがあります。

このような自由記載は、内容を小さく分け、似た意味をまとめることで整理できます。

この記事では、看護研究初心者向けに、自由記載アンケートを、

回答一覧 → 意味のまとまり → コード → カテゴリー → 結果

の順番で整理する方法を解説します。

この記事で扱うのは、主に院内学習会、委員会活動、業務改善、看護研究で集めた短い自由記載回答です。

長時間のインタビューや詳細な質的研究では、研究目的に合った分析方法を選び、指導者や質的研究経験者へ相談してください。

【内部リンク】
アンケートをまだ作成していない方は、先に
「看護研究アンケートの作り方|質問項目作成のコツとNG例」
を確認してください。


この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 自由記載を整理する目的
  • 単純なコメント整理と質的分析の違い
  • 回答を分析する前の準備
  • 意味単位への分け方
  • コードの付け方
  • サブカテゴリー・カテゴリーの作り方
  • カテゴリー件数の数え方
  • 結果の書き方
  • Googleスプレッドシートの整理項目
  • ChatGPTを補助的に使う方法
  • 個人情報や匿名性の注意点
  • 初心者がよくする失敗

この記事のゴールは、難しい質的研究の理論をすべて理解することではありません。

集まった自由記載を、根拠がわかる形で整理し、研究結果や業務改善へつなげられるようになることです。


自由記載アンケートとは?

自由記載アンケートとは、あらかじめ用意された選択肢ではなく、回答者が文章で自由に答える質問形式です。

たとえば、学習会後のアンケートでは、次のような質問を使います。

  • 学習会でわかりやすかった点を教えてください
  • わかりにくかった点を教えてください
  • 今後取り上げてほしい内容を教えてください
  • 業務上困っていることを自由に記入してください
  • マニュアルについて改善してほしい点を教えてください

自由記載を使うと、選択式の回答だけでは把握できない具体的な理由や要望を確認できます。

たとえば、満足度が5段階中「3」だった場合、数字だけでは理由がわかりません。

自由記載に、

「内容はよかったが、説明が早くてメモを取れなかった」

と書かれていれば、満足度が上がらなかった背景を理解できます。

ただし、自由記載が多すぎると回答者の負担が増え、分析にも時間がかかります。

自由記載欄は、研究目的に必要なものへ絞ることが大切です。


自由記載はすべて質的研究になるのか

自由記載を使ったからといって、すべてが本格的な質的研究になるわけではありません。

目的や回答量によって、整理方法は変わります。

1. コメントを一覧化する

院内学習会の振り返りや委員会活動では、回答を一覧にして、次回改善へ活用するだけの場合があります。

例:

  • 質問時間を増やす
  • 資料を事前に配布する
  • 実技練習を追加する

この場合は、必ずしも複雑な分析をする必要はありません。

2. 似た意見を分類して件数を数える

看護研究や業務改善では、似た回答をまとめ、カテゴリーごとの件数を示す方法があります。

例:

  • 説明のわかりやすさ:8件
  • 時間不足:6件
  • 実技練習の希望:5件

ただし、分類基準や数え方を決め、誰が見ても分析過程を確認できるようにする必要があります。

3. 質的内容分析を行う

対象者の経験、認識、困難、意味などを深く明らかにする場合は、研究方法として質的内容分析などを選びます。

質的内容分析では、文章を繰り返し読み、意味単位、コード、カテゴリーなどを作成します。

質的内容分析には帰納的・演繹的な進め方があり、一般的には「準備」「整理」「報告」の段階を通して分析すると説明されています。 (Europe PMC)

短い自由回答でも内容分析は可能ですが、研究として扱う場合は、単にAIで分類したり、頻出語を数えたりするだけでは不十分です。

どの文章から、なぜそのコードやカテゴリーを作ったのかを説明できることが大切です。 (PubMed Central (PMC))


分析前に研究目的を確認する

自由記載を整理する前に、研究目的を確認します。

同じ回答であっても、何を明らかにしたいかによって、注目する部分が変わるためです。

たとえば、次の自由記載があったとします。

具体例があって理解しやすかったですが、説明が早く、質問する時間がありませんでした。

研究目的が、

「学習会で理解を促進した要因を明らかにする」

であれば、

  • 具体例による理解促進

に注目します。

一方、研究目的が、

「学習会の改善点を明らかにする」

であれば、

  • 説明速度が速い
  • 質問時間が不足している

に注目します。

研究目的が曖昧なまま分析を始めると、気になった言葉を集めるだけになり、カテゴリーにも一貫性がなくなります。

分析前に、次の一文を確認してください。

この自由記載から、何を明らかにしたいのか。


自由記載を整理する全体の流れ

初心者は、次の順番で進めると整理しやすくなります。

  1. 回答データを保存する
  2. 個人情報を削除する
  3. すべての回答を読む
  4. 意味のまとまりに分ける
  5. 意味を短く表すコードを付ける
  6. 似たコードをまとめる
  7. サブカテゴリーを作る
  8. カテゴリーを作る
  9. 原文と照らし合わせる
  10. 件数や代表的な回答を整理する
  11. 結果として文章化する

質的内容分析では、文章から意味のある部分を取り出し、要約・抽象化しながらコードやカテゴリーへ整理します。分析単位、意味単位、コード、カテゴリー、テーマなどの関係を明確にすることが、分析過程の信頼性を保つうえで重要です。 (SPIRHR (Indico))


STEP1:元の回答データを保存する

最初に、元の回答を変更せず保存します。

Googleフォームを使った場合は、Googleスプレッドシートへ回答を連携できます。

保存するときは、次の2つを分けておくと安心です。

  • 元データ
  • 分析作業用データ

元データは変更せず、分析作業はコピーしたファイルで行います。

誤って文章を削除したり、コードへ置き換えたりしても、元の回答へ戻れるようにするためです。

データ保存時に確認すること

  • ファイルの保存場所
  • アクセスできる人
  • パスワードの有無
  • 共同編集者
  • 保存期間
  • 削除方法
  • 施設の情報管理ルール

【内部リンク】
Googleフォームとスプレッドシートの連携は、
「Googleフォームの回答を自動集計する方法」
で解説しています。


STEP2:個人を特定できる情報を削除する

自由記載には、質問していなくても個人情報が書かれることがあります。

たとえば、

  • 患者氏名
  • 職員名
  • 部署名
  • 日付
  • 特定の処置や手術
  • 特定の勤務帯
  • 特徴的な出来事
  • インシデントの内容

などです。

また、名前が書かれていなくても、

「〇月の夜勤中に〇〇の対応をした新人看護師」

のような記述から個人が推測されることがあります。

分析前に、個人や施設が特定される部分を確認し、必要に応じて置き換えます。

例:

修正前
「A病棟の〇〇さんが説明してくれて助かった」

修正後
「病棟スタッフが説明してくれて助かった」

ただし、元のデータを直接書き換えず、匿名化した分析用コピーを作成します。


STEP3:すべての回答を繰り返し読む

すぐにカテゴリーを作ろうとせず、最初に回答全体を読みます。

この段階では、

  • どのような意見が多いか
  • 似た表現があるか
  • 意見の幅はどのくらいか
  • 予想していなかった内容があるか
  • 肯定的・否定的な意見は何か

を大まかに確認します。

最初から「良い意見」「悪い意見」の2つに分けると、内容の違いを見落とすことがあります。

たとえば、

「説明が早かった」

と

「学習時間が短かった」

は、どちらも否定的な意見ですが、改善方法は異なります。

前者は説明速度、後者は時間設定の問題です。

回答の背景を考えながら読みましょう。


STEP4:意味のまとまりに分ける

1人の回答に、複数の内容が含まれていることがあります。

その場合は、意味が変わるところで分けます。

回答例

具体例があって理解しやすかったですが、説明が早く、質問する時間がありませんでした。

この回答には、次の3つの内容があります。

  1. 具体例があった
  2. 理解しやすかった
  3. 説明が早く、質問時間がなかった

分析では、研究目的に関係する意味のまとまりに分けます。

意味単位内容
具体例があって理解しやすかった具体例が理解を助けた
説明が早かった説明速度が速かった
質問する時間がなかった質問時間が不足した

1件の回答を必ず1つのカテゴリーに入れる必要はありません。

1人の回答から、複数の意味単位やコードが作られることがあります。


STEP5:意味を短く表すコードを付ける

コードとは、意味単位の内容を短い言葉で表したものです。

コードを付けるときは、元の回答の意味を変えすぎないことが大切です。

コード作成例

元の回答意味の要約コード
実際の事例があってわかりやすかった事例により理解できた具体例による理解促進
グループで話し合えて理解が深まった話し合いで理解が深まった意見交換による理解促進
説明が早くてついていけなかった説明速度が速かった説明速度の速さ
質問時間をもっと増やしてほしい質問時間を希望している質問時間の不足
実技練習をもう一度行いたい実技練習を希望している実技練習の希望

コード名を付けるポイント

  • 元の意味から離れすぎない
  • 長い文章にしない
  • 良い・悪いだけで終わらせない
  • 同じ意味には同じコードを使う
  • 違う意味を無理にまとめない
  • 判断に迷った理由をメモする

コードは、最初から完璧でなくても構いません。

分析を進めながら、似たコードを統合したり、広すぎるコードを分けたりします。


STEP6:似たコードをまとめる

コードを作成したら、内容が似ているものをまとめます。

たとえば、次のコードがあったとします。

  • 具体例による理解促進
  • 写真による理解促進
  • 図による理解促進
  • グループワークによる理解促進
  • 意見交換による理解促進

これらをすべて1つにまとめるのではなく、まず近いものを小さくまとめます。

サブカテゴリー例

視覚資料による理解促進

  • 写真による理解促進
  • 図による理解促進

具体的説明による理解促進

  • 具体例による理解促進
  • 実際の場面を用いた説明

参加型学習による理解促進

  • グループワークによる理解促進
  • 意見交換による理解促進

このように、コードより少し抽象度の高いまとまりを、サブカテゴリーとして整理します。


STEP7:カテゴリーを作る

サブカテゴリーをさらにまとめ、研究目的に関係する大きなまとまりを作ります。

カテゴリー作成例

コードサブカテゴリーカテゴリー
写真による理解促進視覚資料による理解促進学習内容の理解を助ける工夫
図による理解促進視覚資料による理解促進学習内容の理解を助ける工夫
具体例による理解促進具体的説明による理解促進学習内容の理解を助ける工夫
意見交換による理解促進参加型学習による理解促進学習内容の理解を助ける工夫
説明速度の速さ進行速度への不満学習時間と進行上の課題
質問時間の不足質疑時間の不足学習時間と進行上の課題
実技練習の希望実践的学習の希望今後希望する学習方法

カテゴリー名は、含まれているコードの共通点がわかるように付けます。

「その他」「良い意見」「悪い意見」だけでは、何が明らかになったのか伝わりません。

カテゴリー名の良い例

  • 学習内容の理解を助ける工夫
  • 学習時間と進行上の課題
  • 実践的な学習機会への要望
  • マニュアル利用を妨げる要因
  • 急変対応時に感じる判断への不安

カテゴリー名の弱い例

  • 良かったこと
  • 悪かったこと
  • 意見
  • 感想
  • その他

STEP8:原文へ戻って確認する

カテゴリーができたら、必ず元の回答へ戻ります。

確認するポイントは次のとおりです。

  • 原文の意味を変えていないか
  • 都合のよい解釈をしていないか
  • 反対意見を無視していないか
  • カテゴリー名が広すぎないか
  • 同じコードが別カテゴリーに重複していないか
  • 研究目的と関係しているか
  • 分類できない回答を無理に入れていないか

カテゴリーを作ることが目的ではありません。

回答者が伝えた内容を、研究目的に沿って理解できる形にすることが目的です。

分析に迷った場合は、研究メンバーや指導者と原文を確認します。


複数人で分析を確認する

自由記載の分析には、研究者の解釈が入ります。

そのため、可能であれば、1人だけで最終決定せず、研究メンバーや指導者と確認します。

確認する内容

  • 意味単位の分け方
  • コード名
  • 似たコードのまとめ方
  • サブカテゴリー名
  • カテゴリー名
  • 分類に迷った回答
  • 反対意見や少数意見の扱い

全員が完全に同じ分類をする必要はありません。

なぜそのコードにしたのかを話し合い、分析基準をそろえることが重要です。

分析過程、研究者の判断、代表的な引用などを明確に記録すると、結果の透明性を高めやすくなります。正式な質的研究では、研究チーム、研究方法、分析、結果の報告項目を確認するガイドラインもあります。 (EQUATOR Network)


カテゴリーの件数はどう数える?

自由記載をカテゴリーへ整理した後、カテゴリーごとの件数を示す場合があります。

ただし、数え方を事前に決める必要があります。

数え方1:回答者数で数える

同じ回答者が1つのカテゴリーに関する内容を複数回書いていても、1人として数えます。

例:

1人の回答に、

「説明が早かった。後半も進行が速く感じた」

と書かれている場合、

「進行速度への不満」は1人と数えます。

数え方2:記述数で数える

同じ人の回答に複数の意味単位があれば、それぞれを数えます。

ただし、この場合は「人数」ではなく「記述数」や「コード数」と表現します。

表示例

  • 「進行速度への不満」を記載した回答者:6人
  • 「進行速度への不満」に関する記述:8件

人数と記述数を混ぜないようにします。

件数が多いほど重要とは限らない

1件しかない意見でも、安全性や倫理に関わる重要な内容かもしれません。

たとえば、

「個人名がスライドに表示されていた」

という意見が1件だけでも、無視してよいわけではありません。

頻度は傾向を示す一つの情報ですが、重要性そのものではありません。


Googleスプレッドシートの整理項目

自由記載は、GoogleスプレッドシートやExcelを使うと整理しやすくなります。

おすすめの列は次のとおりです。

列入力内容
A回答ID
B元の回答
C匿名化後の回答
D意味単位
E意味の要約
Fコード
Gサブカテゴリー
Hカテゴリー
I分類理由・メモ
J研究メンバー確認

回答IDの例

  • R001
  • R002
  • R003

氏名やメールアドレスではなく、分析用のIDを付けます。

元の回答を残す

元の回答を消してコードだけにすると、後から意味を確認できません。

必ず原文とコードを並べて保存します。


自由記載の分析例

ここでは、学習会後の自由記載を例に整理します。

質問

「今回の学習会について、よかった点と改善してほしい点を教えてください」

回答

R001
実際の事例があり、イメージしやすかったです。

R002
グループワークで他のスタッフの考えを聞けたのがよかったです。

R003
内容はわかりやすかったですが、説明が早く、質問する時間がありませんでした。

R004
実技練習の時間をもっと増やしてほしいです。

分析例

ID意味単位コードサブカテゴリーカテゴリー
R001実際の事例でイメージできた具体例による理解促進具体的説明による理解促進学習内容の理解を助ける工夫
R002他のスタッフの考えを聞けた意見交換による学び参加型学習による理解促進学習内容の理解を助ける工夫
R003内容はわかりやすかった内容のわかりやすさ説明内容への肯定的評価学習内容の理解を助ける工夫
R003説明が早かった説明速度の速さ進行速度への不満学習時間と進行上の課題
R003質問時間がなかった質問時間の不足質疑時間の不足学習時間と進行上の課題
R004実技練習を増やしてほしい実技練習の希望実践的学習の希望今後希望する学習方法

R003の回答は、肯定的な内容と改善点の両方を含んでいます。

このように、1つの回答から複数の意味単位を取り出すことがあります。


結果の書き方

自由記載の結果では、次の順番で書くと整理しやすくなります。

  1. 回答者数
  2. 自由記載の回答者数
  3. 分析方法
  4. 抽出されたカテゴリー
  5. カテゴリーの内容
  6. 必要に応じて件数
  7. 匿名化した代表的な記述

結果の例

アンケート回答者24人のうち、18人から自由記載回答が得られた。

自由記載を意味のまとまりごとに分け、内容を要約してコード化した。類似するコードをまとめ、サブカテゴリーおよびカテゴリーを作成した。

分析の結果、以下の3カテゴリーが抽出された。

  1. 学習内容の理解を助ける工夫
  2. 学習時間と進行上の課題
  3. 今後希望する学習方法

「学習内容の理解を助ける工夫」では、具体例、図、グループワークが理解につながったという記述がみられた。

代表的な記述として、

実際の事例があり、対応場面をイメージしやすかった。

があった。

「学習時間と進行上の課題」では、説明速度や質問時間に関する記述がみられた。

説明が早く、質問する時間がなかった。

「今後希望する学習方法」では、実技練習やシミュレーションを希望する記述がみられた。

引用時の注意

代表的な記述を掲載する場合は、個人が特定されないか確認します。

表記例:

  • R001
  • 回答者A
  • 参加者01

部署名、経験年数、役職などを一緒に表示すると、個人が推測されることがあります。


結果と考察を分ける

自由記載をまとめるときは、結果と考察を混ぜないようにします。

結果に書くこと

  • どのカテゴリーが抽出されたか
  • どのような回答が含まれていたか
  • 何人または何件あったか
  • 代表的な記述

考察に書くこと

  • なぜその意見が出たのか
  • 先行研究と一致しているか
  • 自部署ではどのような意味があるか
  • 改善策として何が考えられるか
  • 今後何を検証する必要があるか

悪い例

結果として、質問時間が足りないため、次回は学習会時間を15分延長する必要があると考えた。

「15分延長する必要がある」は研究者の解釈や改善案なので、考察に書きます。

分けた例

結果
「質問する時間がなかった」「もう少し質問時間がほしい」という記述が6人から得られた。

考察
学習会の内容だけでなく、質問時間の確保が理解を支える可能性がある。次回は説明時間を短縮し、質疑応答の時間を確保する必要があると考える。

【内部リンク】
考察の書き方は、
「看護研究の考察の書き方|結果との違いとまとめ方」
も参考にしてください。


ChatGPTは自由記載分析に使える?

ChatGPTは、自由記載の整理を補助するために使えます。

ただし、研究者の代わりに最終分析を任せる使い方はおすすめしません。

補助的に使いやすい作業

  • 長い文章を意味単位の候補に分ける
  • コード名の候補を出す
  • 似たコードの候補を並べる
  • カテゴリー名の言い換え候補を出す
  • 表形式に整える
  • 分析基準の不一致を見つける

使用してはいけない情報

  • 患者情報
  • 職員名
  • 施設名
  • 部署が特定される情報
  • インシデントの具体的内容
  • 公開前の機密情報
  • 倫理審査で外部入力が認められていないデータ

AIを利用する前に、施設ルール、研究計画、倫理審査の内容を確認します。

プロンプト例

以下は、個人情報と施設情報を削除した学習会後アンケートの自由記載です。

研究目的は、「学習会の理解を促進した要因と改善点を明らかにすること」です。

次の作業をしてください。

  1. 回答を意味のまとまりに分ける
  2. 元の意味を変えない短いコード候補を付ける
  3. 似たコードの候補を示す
  4. 判断に迷う部分を明示する

カテゴリーの最終決定はせず、候補として提示してください。

【自由記載】
匿名化済みの文章を入力

最後は人が確認する

ChatGPTが作ったコードには、次の問題が起こる可能性があります。

  • 文脈を読み違える
  • 似ていない意見をまとめる
  • 少数意見を削る
  • 否定的な意見を弱める
  • 研究目的に合わない分類をする
  • 抽象的すぎるカテゴリー名を付ける

AIの出力は候補として使用し、必ず原文と照合してください。


自由記載分析でよくある失敗

1. 最初からカテゴリーを決める

回答を読む前に、

  • 良かった点
  • 悪かった点
  • その他

と決めると、回答に含まれる具体的な意味を見落とします。

既存の理論や枠組みに基づく演繹的分析を行う場合を除き、まず回答内容を確認します。

2. 1人の回答を1つにしか分類しない

1つの回答に、複数の意見が含まれることがあります。

意味が変わる部分で分けてください。

3. 件数が多い意見だけを残す

少数意見であっても、安全性、倫理、個人情報、業務上の危険に関わる内容は重要です。

4. 否定的な意見を除外する

発表しにくい意見や研究者にとって都合の悪い意見も、研究目的に関係するなら分析対象です。

5. コードが原文から離れすぎる

「説明が早かった」という回答を、

「教育体制が不十分」

とコード化すると、解釈が広すぎます。

まずは「説明速度の速さ」のように、原文に近いコードを付けます。

6. 分類基準を途中で変える

分析途中で基準を変えた場合は、すでに分類した回答も再確認します。

7. 元の回答を消す

コードとカテゴリーだけを残すと、分析の根拠を確認できません。

元の文章は必ず残します。

8. 頻出語だけで結論を出す

単語の出現回数だけでは、文脈や否定表現を判断できません。

「不安が減った」と「不安が残った」には同じ「不安」という言葉が含まれますが、意味は異なります。


自由記載分析の提出前チェックリスト

分析前

  • 研究目的を確認した
  • 元データを保存した
  • 分析用コピーを作成した
  • 個人情報を削除した
  • 分析対象と除外基準を決めた

コード作成

  • 意味が変わる部分で分けた
  • 原文に近いコードを付けた
  • 同じ意味に同じコードを使った
  • 分類理由をメモした
  • 少数意見も確認した

カテゴリー作成

  • 似たコードをまとめた
  • カテゴリー名が内容を表している
  • 良い・悪いだけで分類していない
  • 元の回答と照合した
  • 研究メンバーと確認した

結果作成

  • 回答者数を示した
  • 分析手順を示した
  • 件数の数え方を明示した
  • 結果と考察を分けた
  • 引用から個人が特定されない
  • 都合の悪い回答を除外していない

まとめ

自由記載アンケートには、選択式の回答だけでは把握できない理由、背景、要望、困りごとが含まれています。

ただし、回答をそのまま並べるだけでは、看護研究の結果として伝わりにくいことがあります。

自由記載は、次の順番で整理します。

  1. 元データを保存する
  2. 個人情報を削除する
  3. 回答全体を読む
  4. 意味のまとまりに分ける
  5. コードを付ける
  6. 似たコードをまとめる
  7. サブカテゴリー・カテゴリーを作る
  8. 原文と照合する
  9. 複数人で確認する
  10. 結果としてまとめる

大切なのは、きれいなカテゴリーを作ることではありません。

回答者が書いた内容を変えず、どの文章からどの結果を導いたのか説明できることです。

また、自由記載では、名前を聞いていなくても、部署、経験年数、具体的な出来事などから回答者が推測される可能性があります。

匿名化とデータ管理を確認し、施設の倫理審査や研究ルールに沿って扱いましょう。

最初は、少数の回答を使って、

意味単位 → コード → カテゴリー

の練習をするのがおすすめです。

分類に迷ったときは、無理に決めず、原文へ戻り、研究メンバーや指導者と話し合ってください。


関連記事


参考文献・参考資料

  • Elo S, Kyngäs H. The qualitative content analysis process. Journal of Advanced Nursing. 2008.
  • Graneheim UH, Lundman B. Qualitative content analysis in nursing research: concepts, procedures and measures to achieve trustworthiness. Nurse Education Today. 2004.
  • Kleinheksel AJ, Rockich-Winston N, Tawfik H, Wyatt TR. Demystifying Content Analysis. American Journal of Pharmaceutical Education. 2020.
  • EQUATOR Network. Consolidated criteria for reporting qualitative research(COREQ)
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