看護研究のアンケート回収率は何%必要?|回答率・有効回答率・未回答の考え方

看護研究
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看護研究でアンケートを実施したあと、

「50人に配ったのに35人しか回答がなかった」

「回収率70%なら研究として大丈夫?」

「何%集まれば十分なの?」

「無回答が多かったら研究は失敗?」

と不安になることはないでしょうか。

アンケート研究では、回答が多く集まるほど安心できるように感じます。

しかし、

「回収率が○%以上なら必ずよい研究」

という一律の基準があるわけではありません。

大切なのは、

  • 何人へ依頼したのか
  • 何人から回答を得たのか
  • 何人分を分析したのか
  • 誰が回答しなかった可能性があるのか
  • 未回答によって結果に偏りが生じていないか

まで考えることです。

実際、AAPOR(American Association for Public Opinion Research)も、回答率だけでは非回答による偏りの大きさや有無を判断できないと説明しています。回答率は重要な情報ですが、研究の質を回答率だけで判断するものではありません。

この記事では、

  • 回収率・回答率とは何か
  • 有効回答率との違い
  • 何%なら十分なのか
  • 回答率が低いと何が問題なのか
  • 非回答バイアスとは何か
  • 前後比較で注意すること
  • 回答率を上げる工夫
  • リマインドするときの倫理的注意
  • 研究結果への書き方

を、看護研究初心者向けに解説します。

Googleフォームを使ったアンケートの作成・回収方法から確認したい方は、
Googleフォームでアンケート集計を効率化!現役看護師におすすめの活用法
も参考にしてください。


結論|「何%ならOK?」より、3つの人数を区別する

最初に結論です。

アンケートの結果を見るときは、

回収率○%

だけを見るのではなく、

  1. 研究参加を依頼した人数
  2. 回答した人数
  3. 実際に分析した人数

を分けて確認します。

たとえば、看護師50人へアンケートを依頼したとします。

例

対象候補:50人

↓

回答:40人

↓

回答内容に不備があり4人を除外

↓

分析対象:36人

この場合、

単純な回答割合は、

40 ÷ 50 × 100=80%

です。

分析に使用できた36人を、最初に依頼した50人に対して示すなら、

36 ÷ 50 × 100=72%

となります。

一方、

「回答が得られた40件のうち、何件が分析可能だったか」

を見るなら、

36 ÷ 40 × 100=90%

です。

同じ研究でも、

分母を何にするかによって数字は変わります。

そのため、

「有効回答率72%」

という数字だけを書くのではなく、

何人に依頼し、何人が回答し、何人を分析したのか

を併記する方がわかりやすくなります。


「回収率」と「回答率」はどう違う?

看護研究では、

  • 回収率
  • 回答率
  • 有効回答率

といった言葉が使われます。

ただし、研究や施設によって用語の使い方が少し異なることがあります。

そのため、

名称だけでなく計算方法を書く

ことが重要です。


回収率・回答率の基本的な考え方

院内で対象者が明確なアンケートなら、初心者はまず、

回答した人数 ÷ 依頼した人数 × 100

で整理するとわかりやすくなります。

例

対象者50人

回答者40人

なら、

40 ÷ 50 × 100

=80%

です。

記載例

対象候補者50名へ研究参加を依頼し、40名から回答を得た(回答率80%)。

と書けます。

調査研究ではより厳密な回答率の定義があり、AAPORでは完全回答、部分回答、拒否、未接触、適格性不明などを区別して計算します。研究規模や方法に応じて、適切な定義を選ぶ必要があります。


有効回答とは?

回答が返ってきても、すべてを分析できるとは限りません。

たとえば、

  • ほとんど回答されていない
  • 主要評価項目が未回答
  • 対象条件を満たしていない
  • 前後比較なのに片方しか回答していない
  • 重複回答が確認された

などの場合があります。

研究計画で設定したルールに基づいて、分析に使用できる回答を決めます。

例

50人へ依頼

↓

40人回答

↓

4人分を除外

↓

36人を分析

このとき重要なのは、

都合の悪い回答だから除外するのではなく、研究開始前に除外基準を考えておくこと

です。

回答率は何%あれば十分?

最も気になるところだと思います。

結論として、

「○%以上なら十分」という、すべての看護研究に共通する基準はありません。

必要な回答状況は、

  • 研究目的
  • 対象者数
  • 研究デザイン
  • 対象集団
  • アンケート方法
  • 分析方法
  • 未回答者の特徴

によって変わります。

看護研究でオンラインアンケートを使用した51研究をまとめた2023年のレビューでは、回答率は**3.4%〜98%**と非常に幅があり、平均は42.46%でした。つまり、実際の看護研究でも回答率には大きなばらつきがあります。

したがって、

「80%未満だから研究失敗」

「70%集まったから問題ない」

とは単純には判断できません。


高い回答率=必ず偏りが少ない、ではない

たとえば、100人へ依頼して80人が回答したとします。

回答率は80%です。

数字だけ見ると高く感じます。

しかし、回答しなかった20人が、

  • 夜勤の多いスタッフ
  • 新人看護師
  • 学習会に否定的なスタッフ

に集中していたとしたらどうでしょうか。

80%集まっていても、

特定の人たちの意見が結果へ反映されていない

可能性があります。

一方、回答率が低くても、回答者と未回答者に研究結果へ影響する大きな違いがなければ、非回答による偏りが小さい場合もあります。

実際、看護師調査で回答率26%だった研究でも、非回答者を追加調査した結果、主要な回答に有意な違いが確認されなかった例があります。

そのため、

回答率=研究結果の信頼性

と考えないことが大切です。


非回答バイアスとは?

アンケートへ回答した人と、回答しなかった人に違いがあり、その違いが研究結果へ影響することを、

非回答バイアス(nonresponse bias)

と呼びます。

AAPORでは、非回答者が研究目的に関係する点で回答者と異なる場合、調査結果へ影響する可能性があると説明しています。

例

「院内学習会への満足度」

をアンケートで調べたとします。

満足していた人
→ 積極的に回答

不満だった人
→ アンケートに回答しない

となれば、

回答結果だけを見ると、

実際より満足度が高く見える

可能性があります。

重要なのは、

何人回答しなかったかだけでなく、誰が回答しなかった可能性があるか

を考えることです。


回答率が低いと何が問題?

回答率が低い場合、主に2つの問題を考えます。

1.分析できる人数が少なくなる

50人へ依頼して15人しか回答しなければ、

分析できる人数が減ります。

対象者数が少なくなると、

  • 結果のばらつきが大きくなる
  • 差を見つけにくくなる
  • 結果の精度が低下する

可能性があります。

統計方法によっては、研究計画段階で必要な対象者数を検討する必要があります。


2.非回答者による偏りが起こる可能性がある

15人の回答が、

「特に研究へ興味がある人」

だけだった場合、

部署全体の意見を十分に表していない可能性があります。

つまり、

回答率が低いこと自体より、回答しなかった人との違いが重要

です。

近年のsurvey methodologyでも、代表性は単純な回答率より重要であり、非回答が研究結果に系統的な違いを生じさせているかを検討する必要があるとされています。


「未回答」と「設問への無回答」は分けて考える

アンケートでは、2種類の未回答があります。

アンケートそのものに回答しない

50人へ依頼

↓

40人回答

↓

10人は回答なし

これは、調査単位全体の非回答です。


一部の質問だけ回答しない

40人がアンケートに回答したものの、

質問1:40人回答
質問2:40人回答
質問3:35人回答

ということもあります。

これは、

設問単位の無回答

です。

特に、

  • 年齢
  • 経験年数
  • 個人的な悩み
  • インシデント
  • 所得
  • メンタルヘルス

など、答えにくい内容では設問ごとの無回答が増える場合があります。

結果を書くときは、

各質問の回答者数(n)が同じとは限らない

ことに注意しましょう。

前後比較では「両方に回答した人数」を確認する

学習会研究では、

事前アンケート

↓

学習会

↓

事後アンケート

という方法を使うことがあります。

たとえば、

事前:30人回答

事後:28人回答

だったとします。

これだけを見ると、

「28人を比較できる」

と思うかもしれません。

しかし、

事前30人のうち事後にも回答した人が25人なら、

同じ人の前後比較に使えるのは、

25人

です。

例

対象者30人

↓

事前回答
30人

↓

事後回答
28人

↓

両方回答
25人

↓

前後比較
n=25

となります。

前後の人数だけでなく、

データを対応させられる人数

を確認しましょう。

統計方法については、
看護研究で使う統計方法の選び方|初心者向け8選と早見表
も参考にしてください。


回答率を上げるためにできること

回答率は強制的に上げるものではありません。

しかし、

回答しやすいアンケートを設計する

ことはできます。

看護師を対象としたオンライン調査のレビューでは、アクセスしやすく、簡潔で、回答者にとって取り組みやすい調査設計の重要性が示されています。

1.質問数を増やしすぎない

研究目的と関係のない質問を減らします。

「せっかくだから聞いておこう」

と質問を増やすと、回答者の負担が大きくなります。


2.回答時間の目安を書く

研究依頼文に、

所要時間:約5分

などと記載すると、参加者が回答負担をイメージしやすくなります。


3.スマートフォンから回答できるようにする

Googleフォームなら、

  • スマートフォン
  • タブレット
  • パソコン

から回答できます。

アンケート作成から自動集計までの流れは、
Googleフォームの回答を自動集計する方法|看護研究・委員会活動で使えるGoogleスプレッドシート活用術
で解説しています。


4.回答期間を明確にする

「可能な時にお願いします」

ではなく、

回答期間:9月1日〜9月14日

と期限を明確にします。


5.研究目的をわかりやすく伝える

参加者が、

何のために回答するのか

を理解できることも重要です。

専門的な研究用語を並べるのではなく、

今後の急変対応学習会の内容を検討するため

など、具体的に説明します。


6.必要に応じてリマインドする

回答期間中に、

「回答期限は○日です」

と再案内する方法があります。

ただし、

研究参加は自由意思であることを忘れてはいけません。


回答率を上げるために「強制」してはいけない

院内看護研究では、

対象者が同じ職場のスタッフになることがあります。

ここで、

全員必ず回答してください。

まだ回答していない人は師長へ報告してください。

などとしてしまうと、

自由意思による研究参加ではなくなる可能性があります。

研究参加を断っても、

  • 人事評価
  • 勤務
  • 教育評価
  • 職場関係

などで不利益が生じないことが重要です。

研究参加の任意性や匿名性については、
看護研究の倫理審査で確認されること|研究依頼文・同意説明文・匿名性の考え方
も確認してください。


匿名アンケートで「未回答者」を特定しない

匿名アンケートでは、

誰が回答したかを研究者が確認できない設計にすることがあります。

その場合、

「まだ回答していない人だけにリマインドする」

ことはできません。

だからといって、

匿名アンケートなのに回答者を確認できる仕組みを追加すると、

参加者が想定していた匿名性と異なる可能性があります。

匿名性を確保するのであれば、

全対象者へ一斉に再案内する

など、研究計画と説明内容に合った方法を検討します。


回答率が低かったら研究は失敗?

いいえ。

予定より回答が少なかったとしても、

その事実を正しく報告し、結果の解釈へ反映させます。

たとえば、

研究対象候補者50名へアンケートを依頼し、32名から回答を得た。回答率は64%であった。

と記載します。

さらに、

未回答者の特徴を把握できていないため、研究への関心などが回答の有無に影響した可能性がある。

と研究の限界として考えます。

重要なのは、

回答率を高く見せることではありません。

「どのようなデータが得られたのか」を透明に示すことです。


結果にはどう書く?

アンケート結果では、

  • 対象候補者数
  • 回答者数
  • 回答率
  • 除外数
  • 最終分析対象者数

を示すとわかりやすくなります。

例1|単純なアンケート

対象候補者50名へアンケートを依頼し、40名から回答を得た(回答率80%)。欠損の多い回答4名を除外し、36名を分析対象とした。


例2|除外なし

対象候補者25名全員へアンケートを依頼し、22名から回答を得た(回答率88%)。すべての回答を分析対象とした。


例3|前後比較

学習会参加者30名を対象とし、事前アンケートは30名、事後アンケートは28名から回答を得た。事前・事後の両方へ回答した25名を前後比較の分析対象とした。

人数の流れを読者が追える形にすることがポイントです。


有効回答率を書くときは分母を明確にする

「有効回答率90%」

だけでは、

何に対する90%かわかりません。

たとえば、

50人へ依頼
40人回答
36人分析

なら、

36 ÷ 50=72%

でもあり、

36 ÷ 40=90%

でもあります。

そこで、

50名へ依頼し40名から回答を得た。回答40件のうち36件を分析対象とした。

のように人数を直接書くと誤解を減らせます。

どうしても割合を示す場合は、

計算方法も明確にする

ことをおすすめします。


自由記載では回答数がさらに変わることがある

選択式には40人回答していても、

自由記載を書いたのが18人だけ、

ということもあります。

この場合、

「40人の意見」

として自由記載結果を説明してはいけません。

たとえば、

自由記載欄には18名から回答が得られた。

と明記します。

自由記載をコード・カテゴリーへ整理する方法については、
看護研究の自由記載アンケートを整理する方法|コメントの分類・カテゴリー化・結果のまとめ方
で解説しています。


回答率を確認するチェックリスト

アンケートが終了したら、次の項目を確認します。

対象者

  • 何人へ依頼したか
  • 対象条件を満たしていたか
  • 対象外になった人はいないか

回答

  • 何人が回答したか
  • 回答率を計算したか
  • 一部設問の未回答はないか

分析

  • 何人を分析したか
  • 除外理由が明確か
  • 除外ルールを後から変更していないか

偏り

  • 回答しなかった人に特徴がありそうか
  • 特定の部署・経験年数だけに偏っていないか

報告

  • 分母と分子がわかるか
  • 回答率だけで研究の質を判断していないか
  • 研究の限界へ反映したか

よくある質問

アンケートの回答率は70%あれば十分ですか?

一律には決められません。

研究目的、対象者数、調査方法、分析方法などによって変わります。

回答率だけでなく、未回答者によって結果が偏っていないかを考えることが重要です。


100%回答してもらう必要がありますか?

通常、研究参加は自由意思です。

100%を目指すために参加を強制してはいけません。

対象条件を満たす全員へ依頼することと、全員へ回答を義務づけることは別です。


回答率が50%しかありませんでした。研究は使えませんか?

回答率50%という数字だけで、研究が使えないとは判断できません。

何人が回答したのか、回答者に偏りがないか、研究目的に必要な分析が可能かを確認します。


未回答の質問がある回答は全部除外しますか?

必ずしも全部除外する必要はありません。

主要評価項目なのか、一部の補助的質問なのかによって扱いは変わります。

欠損データの扱いは研究計画段階で考えておくのが理想です。


Googleフォームなら回答率は自動で出ますか?

回答件数は確認できますが、

何人へ依頼したか

はGoogleフォームだけでは自動的に把握できない場合があります。

対象者数と回答数を確認して計算します。

回答データは、
Googleフォームの回答を自動集計する方法|看護研究・委員会活動で使えるGoogleスプレッドシート活用術
を参考に整理してください。


まとめ|回答率は「高い・低い」だけで判断しない

アンケート研究では、

回答率が何%だったか

は重要な情報です。

しかし、

「○%以上ならよい研究」という一律の基準ではありません。

アンケート終了後は、

  1. 何人へ依頼したか
  2. 何人が回答したか
  3. 何人を分析したか
  4. なぜ除外したのか
  5. 未回答者に偏りがないか
  6. 設問ごとの未回答はないか
  7. 前後比較なら両方回答した人数は何人か

を確認します。

特に重要なのは、

回答率が低い=必ず偏っている

でも、

回答率が高い=偏りがない

でもないことです。

回答しなかった人が、回答した人と研究結果に関係する点で異なると、非回答バイアスが生じる可能性があります。

そのため、

「80%集まったから大丈夫」

で終わらせず、

誰の回答が研究結果へ反映されているのか

まで考えましょう。

また、回答率を上げるためには、

  • 質問を絞る
  • 回答時間を短くする
  • スマートフォンで回答しやすくする
  • 期限を明確にする
  • 研究目的を説明する
  • 必要に応じて再案内する

といった工夫ができます。

ただし、研究参加は自由意思です。

回収率を上げることより、対象者の権利を守ることを優先してください。

アンケートが集まったら、次は回答数・割合・5段階評価などを整理し、統計分析や考察へつなげていきます。


こちらもおすすめ


参考文献・参考資料

  • American Association for Public Opinion Research(AAPOR). Standard Definitions: Final Dispositions of Case Codes and Outcome Rates for Surveys, 10th edition.
  • L’Ecuyer KM, Subramaniam DS, Swope C, Lach HW. An Integrative Review of Response Rates in Nursing Research Utilizing Online Surveys. Nursing Research. 2023;72(6):471-480.
  • Phillips AW, et al. Improving response rates and evaluating nonresponse bias in surveys: AMEE Guide No. 102. Medical Teacher.
  • Hendra R, Hill A. Rethinking Response Rates: New Evidence of Little Relationship Between Survey Response Rates and Nonresponse Bias. Evaluation Review.
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