「看護師って、法律ではどんな仕事と決められているの?」
「医師の指示がないと、看護師は何もできないの?」
「看護師と准看護師は、法律上何が違う?」
普段の勤務ではあまり意識しませんが、私たち看護師が「看護師」として働ける根拠になっている法律があります。
それが、保健師助産師看護師法です。
名前を見るだけで少し難しそうですが、看護師にとって重要なのは法律を丸暗記することではありません。
まず、
自分たちの仕事が、どのような考え方で法律上位置づけられているのか
を知ることが大切です。
保健師助産師看護師法では、看護師について「療養上の世話」と「診療の補助」を行う専門職として定めています。看護師は厚生労働大臣の免許を受けて働く国家資格です。
この記事では、保健師助産師看護師法について、
- 看護師とは法律上どんな仕事なのか
- 「療養上の世話」と「診療の補助」の違い
- 医師の指示が必要になる場面
- 看護師と准看護師の違い
- 特定行為研修との関係
- 看護師が法律を知る意味
を、現場の看護師向けにわかりやすく整理します。
関連記事:看護師が知っておきたい制度・法律・団体の基本|働き方とお金を守る入門
結論:保助看法は「看護師とは何をする専門職か」を定める法律
保健師助産師看護師法は、名前のとおり、
- 保健師
- 助産師
- 看護師
- 准看護師
について、免許や業務などを定める法律です。
一般に「保助看法(ほじょかんぽう)」と略して呼ばれることもあります。
看護師については、第5条で、
厚生労働大臣の免許を受け、傷病者などに対する「療養上の世話」または「診療の補助」を行うことを業とする者
と定められています。
つまり、普段何気なく行っている看護には、法律上の根拠があります。

看護師の仕事は大きく2つに分けられる
看護師の定義で特に覚えておきたいのが、
「療養上の世話」と「診療の補助」
という2つの言葉です。
難しそうに見えますが、普段の仕事に置き換えるとイメージしやすくなります。
「療養上の世話」とは?
療養上の世話は、患者さんの療養生活を支える看護の中心的な仕事です。
たとえば、
- 清潔を保つケア
- 食事や排泄の支援
- 体位調整
- 睡眠や休息の支援
- 症状や状態の観察
- 療養生活への支援
- 患者さん・家族への説明や支援
などが関係します。
実際の看護では、患者さんの状態を観察し、
「今日は離床できそうか」
「この患者さんは転倒リスクが高くないか」
「疼痛や呼吸状態を考えると、どのような援助が必要か」
と考えながらケアを行います。
日本看護協会のガイドラインでも、看護師は自身の判断で療養上の世話を実施できる「療養生活支援の専門家」として整理されています。
つまり、
看護師は、医師から一つひとつ指示を受けなければ看護ができない職種ではありません。
専門的な知識と判断を使いながら、患者さんの療養生活を支える役割があります。
「診療の補助」とは?
もう一つが「診療の補助」です。
こちらは、医師や歯科医師が行う診療を補助する業務です。
看護師の現場では、
- 点滴
- 注射
- 採血
- 医療機器を使用する処置
- 医師が行う処置の介助
など、さまざまな行為が関係します。
ただし、
「看護師だから、医療行為なら何でも自由にできる」
わけではありません。
保健師助産師看護師法第37条では、診療機械の使用や医薬品の授与など、医師・歯科医師が行わなければ衛生上危害を生じるおそれがある行為について、原則として主治の医師または歯科医師の指示が必要とされています。臨時応急の手当などには例外があります。
具体的な業務の可否は、行為の内容や患者さんの状態、他の法令・通知、勤務先の体制なども踏まえて判断する必要があります。

「医師の指示がないと看護師は何もできない」は正しくない
新人のころ、
「看護師は医師の指示のもとで働く」
と教わった経験がある人も多いと思います。
もちろん、診療の補助では医師・歯科医師の指示が重要になります。
しかし、だからといって、
看護師のすべての行動に医師の個別指示が必要
という意味ではありません。
たとえば、
患者さんの状態を観察する。
安全な環境を整える。
清潔を保つ。
必要な療養上の援助を考える。
患者さんや家族の不安を把握する。
こうした看護では、看護師自身の専門的判断が重要になります。
看護師の役割を考えるときは、
「医師の指示を実行する人」だけではなく、「療養生活を支える専門職」
という視点を持つことが大切です。
看護師と准看護師は法律上何が違う?
看護師と准看護師の違いも、保健師助産師看護師法に定められています。
看護師
厚生労働大臣の免許を受けます。
准看護師
都道府県知事の免許を受けます。
さらに重要なのが業務の行い方です。
保助看法第6条では、准看護師について、医師・歯科医師または看護師の指示を受けて、療養上の世話や診療の補助を行う者と定めています。
ここが、看護師との大きな法律上の違いです。

看護師でなければ看護師の仕事はできない?
保助看法第31条では、看護師でない者が第5条に規定する業を行うことを原則として制限しています。
ただし、医師法・歯科医師法に基づいて行う場合や、保健師・助産師に関する例外などがあります。
医療現場では、
- 看護師
- 准看護師
- 看護補助者
- 介護職
- 医師
- 薬剤師
- リハビリ職
など、多くの職種が協力して働いています。
そのため、「この行為は看護師しか絶対できない」と業務名だけで簡単に判断するのではなく、それぞれの資格法や通知、業務の内容を確認する必要があります。
日本看護協会も、看護師・准看護師・看護補助者について、各職種の役割や責任を法令等に基づいて整理したガイドラインを公開しています。
看護師は免許を取ったら勉強しなくてもよい?
保助看法には、看護師の学びについても規定があります。
第28条の2では、保健師・助産師・看護師・准看護師について、免許取得後も研修を受けるなどして、資質の向上を図るよう努めることが定められています。
つまり、看護師にとって継続して学ぶことは、単に病院が研修を開催しているからというだけではありません。
医療が変化していく中で、専門職として知識・技術を更新していくことが求められています。
ただし、
「学び続ける努力義務がある」ことと、「勤務時間外に無給で研修すること」は別問題です。
勤務先から参加を求められた研修が労働時間になるかどうかは、労働基準法や実際の参加状況などから別途考える必要があります。
関連記事:看護師の前残業・研修・委員会活動は残業代の対象になる?

特定行為研修も保助看法に定められている
看護師のキャリアを考えるうえで、近年よく聞くのが「特定行為研修」です。
これも保健師助産師看護師法と関係しています。
第37条の2では、看護師が手順書により特定行為を行う場合には、指定研修機関で特定行為研修を受ける必要があると定められています。
ここで重要なのは、
特定行為研修を修了すると、看護師が医師と同じように独立して診療できるようになるわけではない
ということです。
特定行為は「診療の補助」の一部として位置づけられており、医師・歯科医師が作成する手順書に基づいて行います。
特定行為研修については、キャリア・収入・研修費用まで含めて別記事で詳しく整理します。

保助看法を知ることは、なぜ現場の看護師に必要?
ここまで読むと、
「法律はわかったけど、普段の仕事で使うの?」
と思うかもしれません。
しかし、基本を知っておくと、現場で迷ったときの判断材料になります。
たとえば、
「これは看護師が行ってよい業務?」
業務範囲を考えるきっかけになります。
「医師の指示は必要?」
療養上の世話なのか、診療の補助なのかを考える視点になります。
「准看護師との役割は同じ?」
法律上の違いを理解できます。
「特定行為研修を取ると何が変わる?」
現在の看護師業務との位置づけを理解しやすくなります。
「勤務時間外に研修するのは当然?」
専門職としての研鑽と、労働時間の問題を分けて考えられます。
法律を丸暗記する必要はありません。
困ったときに「何を確認すればよいか」を知っていること
の方が大切です。
看護師の業務は、法律だけで決まるわけではない
ここも重要です。
実際の現場で「その看護師がその行為を行えるか」を判断するときは、保助看法だけを見ればよいとは限りません。
- 医師法など他の法律
- 厚生労働省の通知
- 勤務先の規程・マニュアル
- 医師の指示
- 看護師本人の知識・技能
- 患者さんの状態
- 医療安全上の体制
なども関係します。
そのため、
「ネットに看護師ができると書いてあったから行ってよい」
という判断は避けるべきです。
少しでも判断に迷う行為は、勤務先の手順書や管理者、医師、医療安全部門などへ確認しましょう。
看護師としてまず知っておきたい保助看法の5ポイント
最後に、この記事で押さえておきたい部分を整理します。
- 看護師は厚生労働大臣の免許を受ける国家資格
- 看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」
- 診療の補助には医師・歯科医師の指示が関係する
- 看護師と准看護師では免許と業務上の位置づけが異なる
- 免許取得後も資質向上に努めることが求められている
この5つを知っておくだけでも、保助看法の基本的なイメージはつかめます。
まとめ
保健師助産師看護師法は、看護師にとって非常に身近な法律です。
普段は法律を意識しなくても、
- 患者さんの生活を支える
- 状態を観察する
- 点滴や処置を行う
- 他職種と役割分担する
- 研修を受ける
- キャリアアップを考える
といった日常の仕事とつながっています。
特に大切なのは、
看護師は単に「医師の指示を実行する人」ではない
ということです。
「療養上の世話」と「診療の補助」という専門的な役割を持ち、自らの知識と判断を使いながら患者さんの療養を支えています。
一方で、診療の補助や医療行為には法律上のルールがあり、看護師だから何でもできるわけでもありません。
自分の役割と責任を理解することは、患者さんを守るだけでなく、看護師自身を守ることにもつながります。
法律をすべて覚える必要はありません。
まずは、
「療養上の世話」と「診療の補助」
この2つを覚えるところから始めてみましょう。
関連記事:看護師が知っておきたい制度・法律・団体の基本|働き方とお金を守る入門
関連記事:看護師の前残業・研修・委員会活動は残業代の対象になる?
注意書き
本記事は2026年9月時点で確認できる厚生労働省・日本看護協会等の情報をもとに、一般的な制度理解を目的として作成しています。
個別の医療行為や業務範囲については、患者の状態、行為内容、医師の指示、関係法令・通知、勤務先の規程や医療安全体制などによって判断が異なります。
具体的な業務について疑問がある場合は、勤務先の管理者、医師、医療安全担当部署などへ確認してください。
参考情報・参考サイト
- 厚生労働省:保健師助産師看護師法
- 厚生労働省:看護教育ポータル「看護師とは」
- 厚生労働省:特定行為に係る看護師の研修制度
- 日本看護協会:看護業務基準
- 日本看護協会:看護師・准看護師・看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン

