看護師の夜勤手当はなぜ上がりにくい?制度と病院経営の視点

働き方・給与・制度
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「夜勤はこんなに大変なのに、手当はあまり変わらない」

「物価も給料も上がっているのに、夜勤手当は昔から同じ気がする」

「そもそも夜勤手当って、法律で金額が決まっているの?」

夜勤をしている看護師なら、一度は疑問に感じたことがあるかもしれません。

夜勤は、生活リズムが乱れやすく、少ない人数で多くの患者さんを支え、急変にも対応しなければならない働き方です。

それでも、夜勤1回あたりの手当を見ると、

「負担のわりに少ないのでは?」

と感じることがあります。

実際、厚生労働省が2025年に示した資料でも、病院勤務看護職員の夜勤手当は、2010年代に入ってからおおむね横ばいと整理されています。

なぜ、夜勤手当は簡単には上がらないのでしょうか。

その理由を考えるには、

  • 夜勤手当
  • 深夜割増賃金
  • 病院の賃金規程
  • 病院経営
  • 診療報酬
  • 看護職の処遇改善

を分けて考える必要があります。

この記事では、看護師の夜勤手当が決まる仕組みと、なぜ上がりにくいのかを、お金と病院経営の視点から初心者向けに解説します。

関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説

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この記事でわかること

この記事では、以下の内容を解説します。

  • 夜勤手当と深夜割増賃金の違い
  • 看護師の夜勤手当はどれくらいなのか
  • 夜勤手当が病院によって違う理由
  • 夜勤手当が上がりにくい理由
  • 病院経営と看護師の給料の関係
  • 2026年度診療報酬改定による変化
  • 転職時に夜勤手当を見るときの注意点

結論:夜勤手当は「法律で一律に決まる手当」ではない

最初に結論です。

看護師が夜勤をしたときにもらうお金には、大きく分けて、

夜勤手当と深夜割増賃金

があります。

この2つは同じではありません。

深夜割増賃金

労働基準法では、原則として午後10時から午前5時までに働いた場合、通常の賃金に対して25%以上の深夜割増を支払う必要があります。

夜勤手当

一方、一般に「夜勤手当」と呼ばれている定額の手当について、すべての病院で一律○円とする法律上の金額が決められているわけではありません。

実際の支給方法や金額は、病院・施設の賃金規程などによって異なります。

つまり、

法律で保障される深夜割増
+
勤務先が定める夜勤手当

という形になっていることがあります。

ただし、夜勤手当の中に深夜割増分を含めている勤務先もあるため、給与明細や賃金規程を確認することが大切です。


夜勤手当と深夜割増賃金の違い


看護師の夜勤手当はいくらくらい?

日本看護協会の調査をもとに厚生労働省が整理した2024年のデータでは、深夜時間帯の割増賃金を含む夜勤1回あたりの手当は、平均で次のようになっています。

  • 3交代制・準夜勤:4,567円
  • 3交代制・深夜勤:5,715円
  • 2交代制夜勤:11,815円

となっています。

ただし、これはあくまで平均です。

病院の設置主体、病床規模、地域などによって差があります。

2023年の日本看護協会調査では、二交代制夜勤の1回あたり手当は全体平均11,368円でしたが、国立8,527円、公立8,213円、医療法人12,764円など、設置主体による差も確認されています。

つまり、

「看護師なら夜勤1回○円」

という全国共通の金額があるわけではありません。


看護師の夜勤手当の目安


夜勤手当が病院によって違うのはなぜ?

夜勤手当が病院によって違う理由のひとつは、手当が勤務先の賃金制度によって設定されているためです。

同じ看護師でも、

  • 国立病院
  • 公立病院
  • 大学病院
  • 医療法人
  • 社会福祉法人
  • 民間病院

では、給与体系が違います。

さらに、

  • 基本給
  • 夜勤手当
  • 資格手当
  • 住宅手当
  • 扶養手当
  • 退職金
  • 賞与

など、給料全体の設計も異なります。

夜勤手当だけ高くする病院もあれば、基本給を高めに設定する病院もあります。

そのため、夜勤手当だけを切り取って「この病院は給料が高い」と判断するのは注意が必要です。

関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説


なぜ夜勤手当は上がりにくいのか?

ここからがこの記事の中心です。

夜勤手当が上がりにくい背景には、1つではなく、いくつかの理由があります。


理由① 法律で夜勤手当の一律金額が決められていない

まず大きいのが、夜勤手当そのものに全国一律の金額が設定されていないことです。

法律上必要なのは、深夜労働に対する割増賃金などです。

そのため、

「夜勤の負担が大きくなったから、自動的に夜勤手当も上がる」

という仕組みにはなっていません。

夜勤手当を引き上げるには、勤務先側が賃金制度を変更する必要があります。


理由② 夜勤手当を上げると毎月の人件費が増える

病院が夜勤手当を1回1,000円引き上げたとします。

1人だけなら1,000円ですが、夜勤をする看護師が何十人、何百人といる病院では、毎月の人件費への影響は大きくなります。

たとえば、

夜勤看護師100人
× 月4回
× 1,000円増額

なら、

1か月40万円

年間では、

480万円

の追加支出になります。

これは単純化した例ですが、夜勤手当を恒常的に引き上げることは、病院にとって継続的な人件費増につながります。

そのため、一時的な賞与よりも、毎回支払う夜勤手当や基本給の引き上げは慎重に判断されやすいと考えられます。


夜勤手当1,000円アップで病院負担はどう変わる?


理由③ 病院経営そのものが厳しい

看護師からすると、

「夜勤手当くらい上げてほしい」

と思うのは自然です。

しかし、現在の病院経営は厳しい状況にあります。

厚生労働省が第25回医療経済実態調査をもとに示した資料では、一般病床が50%を超える病院について、2024年度に63.3%が経常利益で赤字となっています。

また、一般病院では、給与費の伸びが他産業の賃上げを大きく下回っていることも厚生労働省の資料で示されています。

病院は、

  • 人件費
  • 医薬品
  • 医療材料
  • 医療機器
  • 光熱費
  • 給食
  • 委託費
  • 建物維持費

など、多くの費用を抱えています。

そのため、病院経営が厳しい状況では、夜勤手当だけを大幅に引き上げることが難しい場合があります。


理由④ 病院収入は診療報酬の影響を強く受ける

一般企業では、商品価格を引き上げることで、人件費の上昇分を価格に転嫁できる場合があります。

一方、保険診療を中心とする病院は、国が定める診療報酬の影響を大きく受けます。

そのため、

「人件費が上がったから、明日から医療サービスの価格を自由に上げる」

ということは基本的にできません。

賃金を継続して上げるには、診療報酬や病院収入の改善も重要になります。


看護師の給料と病院経営の関係


では、夜勤手当は今後も上がらない?

ここは、2026年に大きな変化があります。

2026年度診療報酬改定では、厚生労働省が、

夜勤職員を確保する観点から、看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料による収入を、夜勤手当の増額に使える

ことを明示しました。

これは、夜勤を担う看護職を確保するうえで、夜勤手当の改善が政策上も課題として認識されていることを示しています。

一方で、

制度上使えるようになった=すべての病院で夜勤手当が上がる

という意味ではありません。

実際にどの賃金項目を改善するかは、勤務先の状況や制度運用によって変わります。

自分の病院で、

  • ベースアップ評価料を算定しているか
  • 賃金改善について説明があるか
  • 基本給が上がったか
  • 手当が変わったか
  • 夜勤手当が変更されたか

を確認してみる価値があります。


2026年度から夜勤手当改善の選択肢が広がる


夜勤手当を見るときは「1回いくら」だけで判断しない

転職するとき、

「夜勤手当1回15,000円」

と書いてあると、とても魅力的に見えます。

でも、夜勤手当だけで職場を選ぶのはおすすめできません。

見るべきなのは、

  • 基本給
  • 夜勤手当
  • 夜勤回数
  • 賞与
  • 退職金
  • 残業代
  • 年間休日
  • 有給
  • 夜勤中の休憩・仮眠
  • 夜勤明けの勤務
  • 人員配置

です。

たとえば、

A病院
基本給30万円
夜勤手当1万円

B病院
基本給26万円
夜勤手当1万5,000円

であれば、夜勤手当だけを見るとB病院が高く見えます。

しかし、賞与や退職金が基本給をもとに計算される制度なら、長期的にはA病院の方が有利になる可能性もあります。

給与は、必ず総額と内訳で確認しましょう。

関連記事:給与明細と求人票の見方|看護師が転職前に確認したいお金の条件

関連記事:年収だけで転職を決めない理由|看護師が求人票で見るべきポイント


「夜勤手当が高い=良い職場」とも限らない

もう一つ注意したいのが、夜勤手当と働きやすさは別だということです。

夜勤手当が高くても、

  • 夜勤回数が多い
  • 仮眠が取れない
  • 夜勤明けに残業が多い
  • 人員が少ない
  • 休憩が取れない
  • 希望休が通りにくい

のであれば、身体への負担は大きくなります。

夜勤手当は重要ですが、

「いくらもらえるか」だけでなく、「どのような夜勤をするのか」

を見ることが大切です。


夜勤手当を給与明細で確認してみよう

まず、自分の給与明細を見てみましょう。

確認したいのは、次の項目です。

  • 夜勤手当
  • 深夜手当
  • 時間外手当
  • 基本給
  • その他の特殊勤務手当

そして、就業規則や賃金規程も確認します。

確認したいポイント

  • 夜勤1回あたり何円か
  • 二交代と三交代で違うか
  • 深夜割増が別支給か
  • 夜勤手当に深夜割増が含まれているか
  • 夜勤回数で追加手当があるか
  • 休日夜勤で金額が変わるか

給与明細を見る習慣をつけると、処遇改善による変更にも気づきやすくなります。

関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説


夜勤手当が少ないと感じたらどうする?

夜勤手当が少ないと感じても、すぐに転職する必要はありません。

まずは、次の順番で確認してみましょう。

STEP1:自分の夜勤手当を確認する

給与明細と賃金規程を確認します。

STEP2:深夜割増の扱いを確認する

夜勤手当に含まれているのか、別支給なのかを確認します。

STEP3:基本給や賞与も含めて考える

夜勤手当だけでなく、年収全体を見ます。

STEP4:働き方を確認する

夜勤回数、仮眠、休憩、人員配置も確認します。

STEP5:他院と比較する

転職を考える場合は、求人票で同じ条件を比較します。

大切なのは、

「手当が低いから辞める」

ではなく、

「給料と働き方をセットで比較する」

ことです。


まとめ

夜勤は、看護師にとって負担の大きい働き方です。

それでも夜勤手当がなかなか上がらない背景には、複数の理由があります。

この記事のポイントをまとめます。

  • 夜勤手当と深夜割増賃金は別の仕組み
  • 深夜労働には法律上25%以上の割増が必要
  • 夜勤手当の金額は勤務先の賃金制度によって異なる
  • 看護職の夜勤手当は2010年代以降、おおむね横ばいとされている
  • 夜勤手当を上げると病院全体の人件費も継続して増える
  • 病院経営自体が厳しい状況にある
  • 診療報酬も看護師の賃金改善に関係する
  • 2026年度改定ではベースアップ評価料等を夜勤手当の増額に使えるようになった
  • 転職では夜勤手当だけでなく基本給・賞与・休日・夜勤環境まで確認する

夜勤手当は、単純に「病院が上げてくれない」という問題だけではありません。

法律、病院の賃金制度、診療報酬、経営状況がつながっています。

制度を知ることで、

「なぜこの金額なのか」

「自分の給与明細ではどう扱われているのか」

「転職するとしたら何を比較すればいいのか」

が見えやすくなります。

まずは今月の給与明細で、自分の夜勤手当と深夜手当を確認するところから始めてみましょう。

関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説

関連記事:給与明細と求人票の見方|看護師が転職前に確認したいお金の条件


注意書き

本記事は一般的な制度理解を目的とした内容です。夜勤手当や割増賃金の具体的な扱いは勤務先の賃金規程・就業規則・勤務形態などによって異なります。個別の労働問題や法的判断については、勤務先の人事・総務、労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士、所属組合などに確認してください。


参考情報・参考サイト

  • 厚生労働省:労働基準法における深夜割増賃金
  • 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定
  • 厚生労働省:第25回医療経済実態調査
  • 日本看護協会:看護職の給与に関するデータ
  • 日本看護協会:2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査



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