教育担当になった看護師が知っておきたい|コーチングとティーチングの違い

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教育担当になった看護師が知っておきたい|コーチングとティーチングの違い

教育担当に初めて任命されると、

「どこまで教えればいいの?」
「自分で考えさせたいけど、放置になっていない?」
「何度も説明しているのに、なかなかできるようにならない」

と悩むことがあります。

後輩指導では、ただ優しく関わるだけでも、ただ厳しく教えるだけでもうまくいきません。

大切なのは、ティーチングとコーチングを場面に応じて使い分けることです。

厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」でも、教育担当者は部署で行われる研修の企画・運営、実地指導者への助言、新人看護職員への指導・評価を担う存在とされています。つまり教育担当者には、知識や技術を教えるだけでなく、新人や後輩が成長できるように支える役割があります。

この記事では、初めて教育担当になった看護師に向けて、コーチングとティーチングの違い、使い分け方、看護現場での声かけ例を解説します。


コーチングとティーチングの違い

コーチングとティーチングの違いを一言でいうと、次のようになります。

ティーチングは「教える関わり」
コーチングは「引き出す関わり」

ティーチングでは、教育担当者が知識・技術・手順・ルールを具体的に伝えます。

一方、コーチングでは、相手が自分で考え、答えや行動を見つけられるように支援します。

国際コーチング連盟、ICFは、コーチングを「思考を促し創造的なプロセスを通して、個人と職業上の可能性を最大化するよう支援する関わり」と定義しています。

看護現場に置き換えると、コーチングは「後輩に答えを丸投げすること」ではありません。質問や対話を通して、後輩が自分の行動を振り返り、次の行動を考えられるように支援する関わりです。


ティーチングとコーチングの違い


ティーチングとは

ティーチングとは、知識・技術・手順・ルールを具体的に教える関わり方です。

看護現場では、ティーチングが必要な場面は多くあります。

たとえば、新人看護師が初めて点滴管理を行う場合、

「滴下速度を確認します」
「刺入部の発赤や腫脹を見ます」
「輸液ポンプの設定と指示内容を照合します」
「異常があればすぐ報告します」

と、見るべきポイントを具体的に教える必要があります。

新人や未経験者は、まだ判断材料を十分に持っていません。その段階で「どうしたらいいと思う?」と質問ばかりしても、本人は困ってしまいます。

特に、患者安全に関わる内容や、施設内ルール、手順が決まっている業務では、まずティーチングが必要です。


ティーチングが向いている場面

ティーチングが向いているのは、次のような場面です。

場面理由
新人・未経験者への指導まず基礎知識や手順が必要だから
患者安全に関わる場面間違った判断を防ぐ必要があるから
緊急時考えさせるより、具体的な指示が必要だから
施設ルールの説明正解が明確に決まっているから
初めて行う看護技術手順を正しく理解する必要があるから

教育担当者は、後輩の主体性を育てることも大切ですが、最初から「自分で考えて」と任せすぎると、放置と受け取られることがあります。

特に新人期は、まず安全にできるように教えることが重要です。


コーチングとは

コーチングとは、相手が自分で考え、次の行動を決められるように支援する関わり方です。

ICFのコア・コンピテンシーでは、コーチングにおいて信頼関係、傾聴、内省を促す質問、行動につなげる支援などが重視されています。

看護現場でのコーチングでは、次のような声かけが使えます。

「今日の中で、うまくいったことは何ですか?」
「難しかった場面はどこですか?」
「次に同じ場面があったら、どう対応できそうですか?」
「明日から一つ意識するとしたら、何にしますか?」

コーチングは、答えを教えないことではありません。
相手が考えられる段階にあるときに、振り返りを促し、判断力や主体性を育てる関わりです。


コーチングが向いている場面

コーチングが向いているのは、次のような場面です。

場面理由
基本手順を理解している後輩自分で考える余地があるから
振り返りを深めたいとき経験を次の行動につなげられるから
主体性を育てたいとき指示待ちから脱却しやすいから
答えが一つではない課題本人の考えを整理する必要があるから
目標設定を行うとき自分で決めた行動の方が継続しやすいから

たとえば、申し送りがうまくできなかった後輩に対して、すぐに「こう言えばよかった」と答えを伝えるだけでは、本人の振り返りが深まりにくいことがあります。

ある程度経験がある後輩であれば、

「どの情報が整理しにくかった?」
「相手に伝わりにくかった理由は何だと思う?」
「次はどの順番で伝えるとよさそう?」

と問いかけることで、自分で改善策を考えやすくなります。


使い分けフロー


看護現場での具体例

例1:新人が初めて申し送りをする場合

この場合は、まずティーチングが必要です。

「申し送りでは、まず患者さんの現在の状態を伝えます」
「次に、前回からの変化を伝えます」
「最後に、次勤務者に注意してほしいことを伝えます」

このように、申し送りの型を教えます。

一方で、数回経験した後であれば、コーチングに切り替えます。

「今日の申し送りで、一番伝えにくかったところはどこ?」
「情報が多いとき、どう整理すると伝えやすそう?」
「次回は何を意識してみる?」

このように、本人が振り返り、次の行動を考えられるようにします。


例2:点滴管理を指導する場合

新人が初めて点滴管理を行う場合は、ティーチングです。

「指示内容と輸液ポンプの設定を確認します」
「刺入部の腫脹や発赤を観察します」
「患者さんの訴えも確認します」
「異常があればすぐ報告します」

安全に関わるため、曖昧なまま任せるのは危険です。

しかし、基本ができるようになってきたら、コーチングが使えます。

「今日は何を見て異常がないと判断した?」
「もし刺入部が腫れていたら、次に何をする?」
「報告するとき、どの情報を伝えるとよい?」

このように問いかけることで、観察、判断、報告の流れを自分で考える練習になります。


教育担当者が注意したいNG対応

教育担当者が注意したいのは、コーチングのつもりが丸投げになってしまうことです。

たとえば、

「自分で考えて」
「なんでわからないの?」
「前にも言ったよね」
「それくらい考えればわかるでしょ」

このような声かけは、後輩を萎縮させてしまう可能性があります。

まだ知識や経験が不足している段階では、考えるための材料がありません。
そのため、まずはティーチングで土台を作ることが大切です。

一方で、いつまでも答えを与え続けると、後輩は指示待ちになりやすくなります。

教育担当者は、後輩の成長段階を見ながら、

今は教える場面なのか
今は考えさせる場面なのか

を判断する必要があります。


NG対応とよい声かけ


明日から使える声かけ例

ティーチングで使える声かけ

「まずは手順を一緒に確認しましょう」
「この場面では、この順番で行うと安全です」
「ここは患者安全に関わるので、必ず守ってください」
「次は私が見ながら一緒にやってみましょう」
「わからないところは、ここで一度確認しましょう」

ティーチングでは、曖昧な表現よりも、具体的に伝えることが大切です。


コーチングで使える声かけ

「今日の中で、うまくいったことは何ですか?」
「難しかった場面はどこですか?」
「自分では、何が原因だったと思いますか?」
「次に同じ場面があったら、どう対応できそうですか?」
「明日から一つ意識するとしたら、何にしますか?」

コーチングでは、責める質問ではなく、振り返りを促す質問にすることが大切です。


教育担当者は「教える人」だけではない

教育担当者というと、「後輩に正しく教えなければいけない」と考えがちです。

もちろん、知識や技術を正しく教えることは重要です。

しかし、それだけでは後輩の自立にはつながりません。

厚生労働省のガイドラインでも、新人看護職員は研修で修得したことを基盤に、生涯にわたって自己研鑽することを目指すとされています。

つまり、教育担当者の役割は、後輩が「教えてもらわないと動けない状態」から、少しずつ「自分で考えて行動できる状態」に近づけることです。

そのために、最初はティーチングで土台を作り、慣れてきたらコーチングで考える力を育てていくことが大切です。


教育担当者の関わり方の流れ


まとめ

コーチングとティーチングの違いは、教えるか、引き出すかです。

ティーチングは、知識・技術・手順・ルールを具体的に教える関わりです。
新人や未経験者、患者安全に関わる場面では、まずティーチングが必要です。

コーチングは、相手が自分で考え、次の行動を決められるように支援する関わりです。
基本が身についてきた後輩の主体性や判断力を育てるために有効です。

教育担当者に大切なのは、どちらか一方だけを使うことではありません。

最初はティーチングで教える
慣れてきたらコーチングで考えを引き出す

この流れを意識することで、後輩は安心して学びながら、少しずつ自立していくことができます。

教育担当になったばかりの看護師は、完璧な指導者を目指す必要はありません。

まずは、後輩に関わるときに、

「今は教える場面か?」
「今は考えを引き出す場面か?」

この2つを意識することから始めてみましょう。


参考文献・出典

  1. 厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」
    新人看護職員研修の理念、教育担当者・実地指導者・研修責任者の役割、研修体制について参考にしました。
  2. International Coaching Federation「About ICF」
    ICFによるコーチングの定義を参考にしました。
  3. International Coaching Federation「2025 ICF Core Competencies」
    コーチングにおける信頼関係、傾聴、内省を促す質問、行動化の支援に関する考え方を参考にしました。
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