看護研究でアンケートやデータを集めたあと、次に困りやすいのが、
「どの統計方法を使えばよいのかわからない」
という問題です。
平均値、中央値、標準偏差、t検定、マン・ホイットニーU検定、カイ二乗検定など、統計には似た言葉が多くあります。
私自身も初めて看護研究に取り組んだときは、検定名を覚えることに意識が向き、どのような場面で使うのかを整理できていませんでした。
しかし、統計方法を選ぶときに最初に考えることは、難しい計算式ではありません。
統計方法を選ぶ基本の順番は、次のとおりです。
- 何を明らかにしたいのか
- どのようなデータを集めたのか
- 何群を比較するのか
- 同じ人の前後比較か、別の人同士の比較か
この記事では、看護研究初心者がよく使う8つの統計方法を、看護現場の具体例とともに解説します。
看護研究全体の進め方から確認したい方は、先に以下の記事をご覧ください。
- 看護研究で使う統計方法の選び方【早見表】
- 統計には「記述統計」と「推測統計」がある
- ① 平均値|データの中心を示す
- ② 中央値|極端な値の影響を受けにくい
- ③ 標準偏差|データのばらつきを示す
- ④ 人数・割合|アンケート結果をわかりやすく示す
- ⑤ クロス集計|2つの項目を組み合わせる
- ⑥ t検定|2群の平均値を比較する
- ⑦ マン・ホイットニーU検定|独立した2群の順位を比較する
- ⑧ カイ二乗検定|人数や割合の違いを比較する
- 手術室看護師の研究例で使い分ける
- 統計方法を選ぶ6つの手順
- 看護研究初心者によくある統計の失敗
- GoogleスプレッドシートやExcelでも分析できる?
- 統計方法を選ぶときの最終チェックリスト
- よくある質問
- まとめ|検定名より「何を比較するか」を先に考える
看護研究で使う統計方法の選び方【早見表】
統計方法は、検定名を暗記するよりも、**「何を比べたいのか」**から選ぶと理解しやすくなります。
| 調べたいこと | データの例 | 最初に考える方法 |
|---|---|---|
| データの中心を知りたい | 年齢、経験年数、テスト点数 | 平均値・中央値 |
| データのばらつきを知りたい | テスト点数、測定値 | 標準偏差 |
| 人数や割合を示したい | 参加あり・なし、認知している・していない | 人数・割合 |
| 2つの項目を組み合わせたい | 経験年数×研修参加経験 | クロス集計 |
| 2群の平均値を比較したい | 新人群と中堅群の知識テスト得点 | t検定 |
| 独立した2群の順位や5段階評価を比較したい | 新人群と中堅群の不安度 | マン・ホイットニーU検定 |
| 人数や割合の違いを比較したい | 経験年数別の研修参加率 | カイ二乗検定 |
注意したいポイント
同じ5段階評価でも、次の2つでは検討する統計方法が異なります。
- 新人群と中堅群など、別の人同士を比較する
- 同じ看護師の研修前後を比較する
データの種類だけでなく、同じ対象者を繰り返し測定したのか、別の対象者を比較したのかも確認しましょう。

統計には「記述統計」と「推測統計」がある
看護研究で使う統計は、大きく2つに分けられます。
記述統計
記述統計は、集めたデータの特徴を整理し、わかりやすく示す方法です。
代表的なものには、次のようなものがあります。
- 平均値
- 中央値
- 標準偏差
- 人数
- 割合
- クロス集計
例えば、アンケート回答者の平均年齢や、研修参加経験がある人の割合を示す場合に使います。
推測統計
推測統計は、集めたデータを使って、群間の差や項目同士の関連を検討する方法です。
代表的なものには、次のようなものがあります。
- t検定
- マン・ホイットニーU検定
- カイ二乗検定
看護研究初心者は、いきなり検定から始めるのではなく、まず記述統計でデータ全体を確認することが大切です。
① 平均値|データの中心を示す
平均値は、すべての数値を合計し、データの個数で割った値です。
例えば、3人の看護師の経験年数が3年、5年、7年の場合、平均経験年数は5年です。
看護研究で平均値を使う例
- 対象者の平均年齢
- 平均経験年数
- 知識テストの平均点
- 業務にかかった平均時間
- 複数項目で構成された尺度の得点
平均値はわかりやすい一方で、極端に大きい値や小さい値の影響を受けやすい特徴があります。
例えば、対応時間が5分、6分、7分、8分、60分だった場合、60分という値に平均値が大きく引っ張られます。
このような場合は、平均値だけでなく、次に説明する中央値も確認します。
② 中央値|極端な値の影響を受けにくい
中央値は、データを小さい順に並べたとき、中央に位置する値です。
例えば、次の5つのデータがあるとします。
5、6、7、8、60
この場合、中央値は7です。
平均値は60の影響を受けて17.2になりますが、中央値は7のままです。
看護研究で中央値を使う例
- 看護師経験年数
- 患者の年齢
- 処置や対応にかかった時間
- 入院日数
- 偏りのあるアンケート得点
データが左右対称に近い場合は平均値が使いやすく、偏りが大きい場合は中央値の方が実態を示しやすいことがあります。
平均値と中央値のどちらか一方を機械的に選ぶのではなく、データの分布を見て判断しましょう。

③ 標準偏差|データのばらつきを示す
標準偏差は、データが平均値の周囲にどの程度ばらついているかを示す値です。
平均点が同じ80点でも、全員が75〜85点に集まっている場合と、40〜100点まで大きく散らばっている場合では、データの意味が異なります。
標準偏差が小さい場合
多くのデータが平均値の近くに集まっています。
標準偏差が大きい場合
個人差が大きく、データが広い範囲に散らばっています。
看護研究で標準偏差を使う例
- 知識テストの得点
- 年齢
- 測定値
- 尺度の合計得点
- 業務時間
平均値を示す場合は、標準偏差も併記すると、データの特徴が伝わりやすくなります。
ただし、データの偏りが大きい場合は、中央値と四分位範囲などを使用することもあります。
④ 人数・割合|アンケート結果をわかりやすく示す
看護研究のアンケートでは、人数と割合を頻繁に使います。
例えば、40人に災害訓練への参加経験を質問し、28人が「参加経験あり」と回答した場合、結果は次のように示せます。
- 参加経験あり:28人、70%
- 参加経験なし:12人、30%
看護研究で人数・割合を使う例
- 研修参加率
- マニュアル認知率
- 手順を実施できた人の割合
- インシデント報告経験の有無
- 質問項目ごとの回答割合
割合だけを示すと、対象者数がわからなくなることがあります。
「80%」だけでなく、**「16人/20人、80%」**のように、人数と割合を両方示すと誤解を減らせます。
⑤ クロス集計|2つの項目を組み合わせる
クロス集計は、2つのカテゴリー項目を組み合わせて、人数や割合を表にする方法です。
例えば、「経験年数」と「災害訓練参加経験」を組み合わせます。
| 参加経験あり | 参加経験なし | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 新人看護師 | 5人 | 15人 | 20人 |
| 中堅看護師 | 16人 | 4人 | 20人 |
この表を見ると、中堅看護師の方が災害訓練への参加経験が多いように見えます。
ただし、クロス集計だけでは、その違いが偶然の範囲なのかまでは判断できません。
人数や割合の差を統計的に検討したい場合は、カイ二乗検定などを検討します。
看護研究で使う組み合わせ
- 経験年数×研修参加経験
- 部署×マニュアル認知度
- 職種×手順の実施状況
- 訓練経験×災害対応への準備状況
⑥ t検定|2群の平均値を比較する
t検定は、主に2群の平均値を比較するときに使われる統計方法です。
ただし、t検定には、比較する対象者の関係によって異なる方法があります。
別の人同士を比較する場合
例えば、新人看護師群と中堅看護師群の知識テスト平均点を比較する場合です。
2つの群に含まれる人が別々であるため、独立した2群の比較として考えます。
同じ人の前後を比較する場合
例えば、同じ看護師に対して、学習会前と学習会後に知識テストを行った場合です。
同じ対象者の前後データであるため、対応のある比較として考えます。
| 比較する内容 | 対象者の関係 | 検討する方法 |
|---|---|---|
| 新人群と中堅群の平均点 | 別の人同士 | 独立2群のt検定 |
| 同じ人の研修前後の平均点 | 同じ人の前後 | 対応のあるt検定 |
看護研究でt検定を使う例
- 学習会前後の知識テスト
- 新人群と中堅群のテスト得点
- 介入前後の業務時間
- 2つのグループの尺度得点
単に「2群だからt検定」と考えるのではなく、データの種類、分布、対象者の関係を確認する必要があります。
⑦ マン・ホイットニーU検定|独立した2群の順位を比較する
マン・ホイットニーU検定は、独立した2群のデータを順位に置き換えて比較するノンパラメトリック検定です。
看護研究では、次のような場面で検討されます。
- 新人看護師群と中堅看護師群を比較する
- 5段階評価を2群で比較する
- 数値データの偏りが大きい
- 対象者数が少なく、正規分布を前提にしにくい
具体例
新人看護師群と中堅看護師群に、災害対応への自信を1〜5点で回答してもらったとします。
- 新人看護師群:別の対象者
- 中堅看護師群:別の対象者
- 回答:1〜5点の順序があるデータ
このような独立した2群の比較では、マン・ホイットニーU検定を検討します。
同じ人の前後比較には注意
同じ対象者の研修前後で5段階評価を比較する場合は、マン・ホイットニーU検定ではなく、ウィルコクソンの符号付順位検定など、対応のあるデータに適した方法を検討します。
マン・ホイットニーU検定は、どの5段階評価にも自動的に使えるわけではありません。
別の人同士なのか、同じ人の前後なのかを必ず確認しましょう。
⑧ カイ二乗検定|人数や割合の違いを比較する
カイ二乗検定は、クロス集計表をもとに、カテゴリー項目同士に関連があるかを検討する方法です。
簡単に言うと、**「グループによって割合に違いがあるか」**を確認するときに使います。
看護研究でカイ二乗検定を使う例
- 新人群と中堅群で研修参加率が違うか
- 部署によってマニュアル認知率が違うか
- 訓練経験の有無によって準備状況が違うか
- 職種によって手順の実施率が違うか
カイ二乗検定に向いているデータ
- 参加した・参加していない
- 知っている・知らない
- 実施した・実施していない
- 経験あり・経験なし
カイ二乗検定では平均値ではなく、各カテゴリーに該当する人数を使います。
対象者数が少なく、クロス集計表の一部の人数が少ない場合は、カイ二乗検定ではなくフィッシャーの正確確率検定を検討することがあります。
詳しい使い方は、以下の記事で解説しています。

手術室看護師の研究例で使い分ける
統計方法は、実際の研究場面に当てはめると理解しやすくなります。
例1:同じスタッフの学習会前後の知識テスト
- データ:0〜100点のテスト得点
- 比較:同じ対象者の前後
- 検討する方法:対応のあるt検定
例2:新人群と中堅群の災害対応への自信
- データ:1〜5点の5段階評価
- 比較:別の2群
- 検討する方法:マン・ホイットニーU検定
例3:同じスタッフの学習会前後の自信
- データ:1〜5点の5段階評価
- 比較:同じ対象者の前後
- 検討する方法:ウィルコクソンの符号付順位検定
例4:新人群と中堅群の災害訓練参加経験
- データ:参加あり・なし
- 比較:別の2群の割合
- 検討する方法:カイ二乗検定
例5:学習会前後のマニュアル認知者数
- データ:知っている・知らない
- 比較:同じ対象者の前後
- 検討する方法:マクネマー検定など
検定名よりも、最初に対象者の関係とデータの種類を確認しましょう。

統計方法を選ぶ6つの手順
手順1:研究目的を確認する
まず、「何を明らかにしたいのか」を1文で書きます。
例えば、
「災害対応学習会の前後で、手術室スタッフの知識得点が変化したかを明らかにする」
という目的であれば、前後の知識得点を比較する必要があります。
手順2:データの種類を確認する
- 連続した数値:年齢、時間、テスト得点
- 順序のあるデータ:5段階評価、順位、重症度
- カテゴリー:あり・なし、知っている・知らない
手順3:比較する群数を確認する
- 1群の特徴を示すだけか
- 2群を比較するのか
- 3群以上を比較するのか
3群以上を比較する場合は、分散分析やクラスカル・ウォリス検定など、別の方法を検討します。
手順4:対応の有無を確認する
- 同じ人の前後比較
- 同じ患者の左右や2つの条件
- 新人群と中堅群など、別の人同士
ここを間違えると、使用する検定方法も変わります。
手順5:データの分布や人数を確認する
平均値、中央値、最小値、最大値、グラフなどを確認します。
対象者数が少ない場合や極端な偏りがある場合は、通常とは異なる方法を検討することがあります。
手順6:研究計画書の段階で相談する
統計方法は、データを集め終わってから考えるのではなく、研究計画書を作る段階で検討します。
アンケート作成前に、次の内容を指導者や統計に詳しい人へ確認しておくと安心です。
- どの項目を比較するか
- 主要な評価項目は何か
- 同じ対象者を追跡できるか
- 必要な対象者数を確保できるか
- どの統計ソフトを使用するか
アンケート作成前の注意点は、以下の記事で解説しています。
看護研究初心者によくある統計の失敗
データ収集後に検定方法を考える
アンケートを集め終わってから統計方法を考えると、比較に必要な項目が不足していることがあります。
研究目的、アンケート項目、分析方法は、研究計画の段階でつなげておきましょう。
同じ人の前後と別の人同士を区別していない
同じ対象者を2回測定したデータには対応があります。
一方で、新人看護師群と中堅看護師群のような別の対象者同士には対応がありません。
この違いは、統計方法を選ぶうえで重要です。
5段階評価なら必ず平均値を出す
5段階評価の単一項目は、回答に順序はありますが、1と2の差が4と5の差と同じとは限りません。
平均値だけでなく、各回答の人数や割合、中央値、分布も確認しましょう。
p値だけで結論を決める
p値が一定の基準を下回ったかどうかだけで、研究結果の価値を判断することはできません。
次の内容も確認する必要があります。
- 実際にどの程度の差があったか
- 人数や割合はどの程度違ったか
- 臨床的・実務的に意味のある差か
- 対象者数は十分か
- 研究の限界は何か
「有意差なし」を「効果なし」と断定する
有意差が認められなかった場合でも、効果がまったくないと断定できるとは限りません。
対象者数が少ない、データのばらつきが大きい、測定方法が適切でないなどの可能性も考える必要があります。
GoogleスプレッドシートやExcelでも分析できる?
人数、割合、平均値、中央値、標準偏差、グラフ作成などの基本的な集計は、GoogleスプレッドシートやExcelでも行えます。
Googleフォームの回答を自動で一覧化したい場合は、以下の記事も参考になります。
一方で、t検定、マン・ホイットニーU検定、カイ二乗検定などを行う場合は、データの入力形式や検定の前提を理解する必要があります。
使用するツールで迷っている方は、以下の記事をご覧ください。
Excel・Googleスプレッドシート・EZR・SPSSの違い
統計方法を選ぶときの最終チェックリスト
- 研究目的を1文で説明できる
- 主要な評価項目が決まっている
- データが数値・順序・カテゴリーのどれか確認した
- 1群か、2群か、3群以上か確認した
- 同じ対象者の前後か、別の対象者同士か確認した
- 人数・割合・平均値などの記述統計を確認した
- 対象者数やデータの偏りを確認した
- 使用する統計ソフトを決めた
- 検定方法を研究計画書に記載した
- 指導者や統計に詳しい人へ確認した

よくある質問
看護研究では難しい統計を使わないといけませんか?
必ずしも難しい統計方法を使う必要はありません。
研究目的によっては、人数、割合、平均値、中央値、グラフなどの記述統計だけでも、重要な結果を示せる場合があります。
複雑な検定を使うことよりも、研究目的と分析方法が一致していることが大切です。
5段階評価は平均値を出してよいですか?
尺度全体の得点なのか、単一の質問項目なのかによって考え方が異なります。
単一の5段階評価では、平均値だけでなく、各回答の人数や割合、中央値、分布も確認するとよいでしょう。
対象者数が少なくてもカイ二乗検定を使えますか?
クロス集計表の一部の人数が少ない場合は、カイ二乗検定が適さないことがあります。
その場合は、フィッシャーの正確確率検定などを検討します。
自己判断せず、研究指導者や統計に詳しい人へ確認しましょう。
統計ソフトが出した結果をそのまま使ってよいですか?
統計ソフトは計算を行ってくれますが、研究目的に合った検定を自動で選んでくれるわけではありません。
入力したデータ、群分け、対応の有無、欠損値、検定方法が適切かを確認する必要があります。
まとめ|検定名より「何を比較するか」を先に考える
看護研究でよく使う基本的な統計方法は、次の8つです。
- 平均値
- 中央値
- 標準偏差
- 人数・割合
- クロス集計
- t検定
- マン・ホイットニーU検定
- カイ二乗検定
統計方法を選ぶときは、検定名を暗記するのではなく、次の順番で整理しましょう。
- 何を明らかにしたいのか
- どのようなデータなのか
- 何群を比較するのか
- 同じ対象者か、別の対象者か
特に注意したいのは、同じ対象者の前後比較と、別の2群の比較では、使用する統計方法が異なることです。
統計方法は、データ収集後ではなく、研究計画書やアンケートを作る段階で決めておくと、後の集計が進めやすくなります。
次に確認する記事
看護研究全体のどの段階にいるか迷っている方は、以下の記事から現在地を確認してください。
実際に検定を行うツールで迷っている方は、以下の記事へ進みましょう。
手元の本で研究目的、アンケート作成、データ分析を確認したい方は、以下の記事も参考にしてください。
実際の統計方法は、研究目的、研究デザイン、データの種類、対象者数、欠損値などによって変わります。
院内研究で使用する場合は、施設の研究指導者、倫理審査担当者、統計に詳しい専門家へ確認してください。

