「看護師の処遇改善ってニュースで聞くけど、自分の給料は上がっているの?」
「ベースアップ評価料って、結局なんの制度?」
「病院はお金をもらっているなら、その分がそのまま看護師に支給されるの?」
このように感じたことはないでしょうか。
看護師の給与をめぐっては、近年「処遇改善」「ベースアップ評価料」「賃上げ」といった言葉を目にする機会が増えました。
しかし、制度の名前だけを見ても、
自分の基本給がいくら上がるのか
までは、なかなかわかりません。
実は、ベースアップ評価料は、病院や診療所などが一定の要件を満たして診療報酬として算定し、その収入を職員の継続的な賃金改善に使う仕組みです。
2026年度の診療報酬改定では、対象となる職員が広がり、医療機関等の対象職員について令和8年度・9年度それぞれ+3.2%のベースアップ実現を支援する方針が示されました。さらに、看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料による収入を、夜勤手当の増額にも使えるようになりました。
ただし、
「3.2%と書いてある=あなたの基本給が必ず3.2%上がる」
という意味ではありません。
この記事では、看護師の処遇改善とベースアップ評価料について、
- そもそも何の制度なのか
- ベースアップとは何か
- 看護師の給料にどう反映されるのか
- 2026年度に何が変わったのか
- 自分の給与で何を確認すればよいのか
を、できるだけ専門用語を使わずに解説します。
関連記事:看護師が知っておきたい制度・法律・団体の基本|働き方とお金を守る入門
関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説
- この記事でわかること
- 結論:ベースアップ評価料は「病院に入ったお金をそのまま均等配布する制度」ではない
- ベースアップ評価料が看護師の給料に届くまで
- そもそも「処遇改善」とは?
- ベースアップとは?
- ベースアップと定期昇給の違い
- 2026年度は何が変わった?
- 変更① 賃上げ支援の水準が引き上げられた
- 変更② 対象となる職員が広がった
- 変更③ 夜勤手当の増額にも使えるようになった
- 2026年度の処遇改善で変わった3つのこと
- ベースアップ評価料は給与のどこに反映される?
- 処遇改善は給与明細のどこに現れる?
- 「ベースアップ評価料を算定しているのに給料が上がっていない」と感じたら?
- 病院ごとに給料の上がり方が違うのはなぜ?
- 「基本給アップ」と「手当アップ」ならどちらがいい?
- 夜勤をしている看護師は特に確認しておきたい
- 処遇改善を確認する5STEP
- 処遇改善を知ることは転職にも役立つ
- まとめ
- 注意書き
- 参考情報・参考サイト
この記事でわかること
この記事では、以下の内容がわかります。
- 看護師の「処遇改善」とは何か
- ベースアップ評価料の仕組み
- ベースアップと定期昇給の違い
- 給与明細のどこに反映される可能性があるか
- 2026年度診療報酬改定の変更点
- 夜勤手当との関係
- 自分の職場で確認したいポイント
結論:ベースアップ評価料は「病院に入ったお金をそのまま均等配布する制度」ではない
最初に結論です。
ベースアップ評価料は、
医療機関が診療報酬として得た収入を、対象となる職員の継続的な賃金改善につなげる仕組み
です。
そのため、
「病院に100万円入ったから、看護師全員に同じ金額を配る」
という制度ではありません。
医療機関は、評価料による収入を基本給や毎月決まって支払われる手当の引き上げなどに充てます。
また、その引き上げに連動して増える賞与、時間外手当、法定福利費などにも使用できます。2026年度からは、恒常的に夜間を含む交代制勤務をしている職員の夜勤手当についても、「基本給等」に含めて賃金改善に活用できることが明確化されています。
つまり、看護師側から見ると、
「処遇改善手当」という名前で必ず給与明細に1項目増えるとは限らない
ということです。
基本給が上がる病院もあれば、毎月支給される手当が増える病院、夜勤手当を改善する病院も考えられます。
ベースアップ評価料が看護師の給料に届くまで

そもそも「処遇改善」とは?
処遇改善とは、簡単にいうと、
働く人の給与や労働条件などを改善すること
です。
看護職については、これまでにも診療報酬を使った処遇改善策が行われてきました。
主な流れとしては、
- 2022年10月〜:看護職員処遇改善評価料
- 2024年6月〜:ベースアップ評価料
- 2026年度:ベースアップ評価料の拡充・対象拡大
があります。
制度の名称がいくつもあるので、少し複雑に感じます。
ただ、看護師側では、
「国が診療報酬を通して医療機関の賃上げを後押ししている」
と大きく捉えると理解しやすいです。
ベースアップとは?
「ベースアップ」という言葉もわかりにくいかもしれません。
厚生労働省は、ベースアップについて、
賃金表の改定などによって賃金水準そのものを引き上げること
と説明しています。
たとえば、
基本給28万円
↓
基本給28万8,000円
のように、同じ年齢・同じ職位でも給与水準そのものが上がるイメージです。
定期昇給とは違う
一方、
「1年働いたから号俸が上がった」
「経験年数が増えて基本給が上がった」
というものは、一般に定期昇給です。
厚生労働省は、年齢や勤続年数の増加による定期昇給は、ベースアップには含まれないとしています。
ベースアップと定期昇給の違い

2026年度は何が変わった?
2026年度診療報酬改定では、医療従事者の賃上げ支援が強化されています。
大きなポイントは3つあります。
変更① 賃上げ支援の水準が引き上げられた
厚生労働省は、医療機関等の対象職員について、
- 令和8年度:+3.2%
- 令和9年度:+3.2%
のベースアップ実現を支援する方針を示しています。
看護補助者や事務職員については、それぞれ+5.7%の支援水準が示されています。
ここで注意したいのは、
これは国が示している賃上げ支援の水準であり、個々の看護師の給与が必ず同率で上がることを保証する数字ではない
ということです。
勤務先の給与体系や職員構成、これまでの賃上げ状況などによって、実際の反映方法は異なります。
変更② 対象となる職員が広がった
2026年度改定では、ベースアップ評価料の対象職員が拡大されています。
事務職員や、40歳未満の医師・歯科医師なども対象に加えられました。経営者や役員等は除かれます。
看護師からすると、
「対象が広がると、自分の取り分が減るの?」
と思うかもしれません。
ただ、評価体系自体も同時に見直されています。
単純に「同じ金額を対象者で割る制度」ではないため、対象者が増えたから看護師の賃上げ額がその人数分だけ減る、という考え方ではありません。
変更③ 夜勤手当の増額にも使えるようになった
看護師にとって特に重要なのが、この変更です。
2026年度改定では、
看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料による収入を、夜勤手当の増額にも使える
ことが明確にされました。
これまでの記事でも解説したように、夜勤手当は看護師の負担に対して長く大きく増えてこなかった課題があります。
今回の改定では、夜勤職員を確保する観点から、夜勤手当改善への活用が明示されています。
ただし、
制度上使えるようになった=すべての病院の夜勤手当が上がる
という意味ではありません。
実際に夜勤手当へどれくらい反映するかは、勤務先の賃金改善方法によって異なります。
2026年度の処遇改善で変わった3つのこと

ベースアップ評価料は給与のどこに反映される?
では、実際に私たちの給与明細ではどこを見るのでしょうか。
厚生労働省の資料では、評価料による収入を使える範囲として、
- 基本給
- 毎月決まって支払われる手当
- 基本給等の引き上げに伴って増える賞与
- 時間外手当
- 法定福利費
などが示されています。
また、恒常的な交代制勤務に対して支払われる夜勤手当も対象に含められます。
給与明細ではここを確認
まずは、前年や数か月前の給与明細と比較してみましょう。
- 基本給が変わっていないか
- 処遇改善手当などが新設されていないか
- 既存の手当額が変わっていないか
- 夜勤1回あたりの手当が変わっていないか
- 病院から賃金改定について説明がなかったか
給与明細の見方がわからない場合は、先に基本給・手当・控除を分けて確認すると理解しやすくなります。
関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説
処遇改善は給与明細のどこに現れる?

「ベースアップ評価料を算定しているのに給料が上がっていない」と感じたら?
ここは慎重に考える必要があります。
ベースアップ評価料を算定する医療機関は、賃金改善の状況について報告する仕組みになっています。
厚生労働省の2026年度特設ページでも、算定医療機関には賃金改善の中間報告や実績報告が求められています。
ただし、あなたの給与明細に
「ベースアップ評価料 ○円」
と書かれるわけではありません。
そのため、
「項目がないから何も反映されていない」
とは限りません。
まず確認するなら、
- 給与明細
- 賃金規程
- 就業規則
- 病院からの給与改定のお知らせ
です。
わからない場合は、人事や総務に、
「今回の賃金改善は給与のどの項目に反映されていますか?」
と確認すると整理しやすいでしょう。
病院ごとに給料の上がり方が違うのはなぜ?
同じ看護師でも、勤務先によって給料の上がり方は異なります。
理由のひとつは、病院によって給与制度が違うからです。
たとえば、
A病院
基本給を引き上げる
B病院
毎月支給する手当を引き上げる
C病院
夜勤手当を引き上げる
など、賃金改善の方法は一つではありません。
また、医療機関ごとに、
- 職員数
- 診療実績
- 給与体系
- これまでの賃上げ状況
- ベースアップ評価料の区分
なども異なります。
そのため、
「友人の病院は月1万円上がったのに、自分は5,000円だからおかしい」
と単純には比較できません。
比較するときは、基本給・各種手当・賞与・夜勤回数まで含めて見る必要があります。
「基本給アップ」と「手当アップ」ならどちらがいい?
看護師のお金を考えるうえでは、ここも重要です。
基本給が上がる場合、病院の給与制度によっては、
- 賞与
- 時間外手当
- 退職金
などの計算にも影響する可能性があります。
一方、手当の増額は、対象となる勤務や条件に応じて支給できるメリットがあります。
どちらが必ず優れているとは言えません。
大切なのは、
「月の総支給がいくら増えたか」だけでなく、「何が上がったのか」を見ること
です。
関連記事:看護師の退職金はいくら?|老後資金を考える前に確認したいこと
夜勤をしている看護師は特に確認しておきたい
2026年度から、夜勤手当への活用が明確になりました。
そのため、夜勤をしている看護師は、
- 夜勤手当の金額
- 深夜割増の扱い
- 夜勤回数
- 処遇改善による変更
- 給与規程の改定
を確認してみる価値があります。
ただし、夜勤手当が増えたからといって、
「夜勤を増やせばもっと稼げる」
と単純に考える必要はありません。
収入だけでなく、睡眠・疲労・休日・体調とのバランスも重要です。
すでに夜勤手当を受け取っている場合は、生活費として使い切るのではなく、貯金や資産形成へ回す考え方もあります。
関連記事:夜勤手当は使う?貯める?|看護師が資産形成に活かす方法
処遇改善を確認する5STEP

処遇改善を知ることは転職にも役立つ
処遇改善制度を知っておくと、転職するときにも役立ちます。
求人票を見るとき、
「月給32万円」
だけを見るのではなく、
- 基本給はいくらか
- 夜勤手当はいくらか
- 処遇改善手当があるか
- 賞与は基本給の何か月分か
- 昇給制度はどうなっているか
- 退職金制度があるか
まで確認できます。
特に、
基本給が低く、手当で月給を高く見せている求人
と、
基本給そのものが高い求人
では、長期的なお金の差が出る可能性があります。
関連記事:看護師が転職前に確認したい給与明細と求人票の見方|年収だけで失敗しない比較方法
関連記事:看護師の転職とお金|年収だけで判断してはいけない理由
まとめ
看護師の処遇改善について聞いても、
「制度はあるらしいけど、自分にはよくわからない」
と感じていた人も多いと思います。
この記事のポイントをまとめます。
- ベースアップ評価料は医療従事者の継続的な賃上げを支援する診療報酬の仕組み
- 病院に入った金額を看護師へ均等配布する制度ではない
- ベースアップと定期昇給は違う
- 2026年度は対象職員の拡大と評価の見直しが行われた
- 対象職員について令和8年度+3.2%のベースアップ実現を支援する方針
- 夜勤手当の増額にも評価料を活用できるようになった
- 実際の給与への反映方法は勤務先によって異なる
- 基本給、手当、夜勤手当、給与改定通知を確認することが大切
制度を知ることの目的は、
「病院はもっと給料を上げるべきだ」
と不満を強めることだけではありません。
自分の給料が、どのような仕組みで決まっているのかを知ること
が大切です。
まずは今月の給与明細と、1年前の給与明細を並べてみてください。
基本給はいくら変わったのか。
手当は増えたのか。
夜勤手当は変わったのか。
そこを確認するだけでも、自分の処遇を考える第一歩になります。
関連記事:看護師の給与明細の見方|基本給・夜勤手当・控除をわかりやすく解説
関連記事:夜勤手当は使う?貯める?|看護師が資産形成に活かす方法
注意書き
本記事は、2026年8月時点の公表情報をもとに、一般的な制度理解を目的として作成しています。実際のベースアップ評価料の算定状況や賃金改善方法、対象職員、給与への反映方法は勤務先によって異なります。
個別の給与制度については勤務先の就業規則・賃金規程・人事担当部署などへ確認してください。
参考情報・参考サイト
- 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定について
- 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について
- 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定 1.賃上げ対応
- 日本看護協会:令和8年度診療報酬改定
- 日本看護協会:看護職員の処遇改善に向けて

