看護研究の倫理審査で確認されること|研究依頼文・同意説明文・匿名性の考え方

看護研究
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看護研究を進める時に、多くの人が不安になるのが倫理審査です。

「院内研究でも倫理審査は必要なの?」
「アンケートだけなら大丈夫?」
「研究依頼文には何を書けばいい?」
「同意説明文って、どこまで説明すればいいの?」
「匿名アンケートなら個人情報の心配はない?」

このように悩む看護師は少なくありません。

看護研究では、研究テーマや方法を考えることも大切ですが、同じくらい大切なのが、研究に協力してくれる人を守ることです。

研究対象者が患者さんであっても、看護師などの職員であっても、研究に参加する人には不利益が生じないように配慮する必要があります。

特にアンケート調査やインタビュー調査では、

  • 誰に依頼するのか
  • どのように説明するのか
  • 参加は自由意思か
  • 断っても不利益がないか
  • 個人情報をどう守るのか
  • 回答データをどう管理するのか

を事前に整理しておくことが重要です。

この記事では、看護研究初心者向けに、倫理審査で確認されやすいポイント、研究依頼文・同意説明文に入れる内容、匿名性の考え方をわかりやすく解説します。

なお、倫理審査の運用は施設によって異なります。

この記事は一般的な考え方を整理するものであり、最終的には必ず所属施設の倫理委員会、看護部、研究担当者、指導者のルールを確認してください。

日本では、人を対象とする生命科学・医学系研究について、関係者が守るべき事項を定めた「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が示されています。この指針は、人間の尊厳と人権を守り、研究の適正な推進を図ることを目的としています。

【内部リンク】
研究計画書の書き方を先に確認したい方は、
「看護研究計画書の書き方|初心者向けに目的・方法・倫理的配慮まで解説」
もあわせて確認してください。


この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 看護研究で倫理審査が重要な理由
  • 倫理審査で確認されやすいポイント
  • 研究対象者を守るために考えること
  • 研究依頼文に入れる内容
  • 同意説明文に入れる内容
  • 匿名アンケートで注意すること
  • Googleフォームを使う時の注意点
  • データ管理で確認すること
  • 倫理審査前のチェックリスト

この記事のゴールは、倫理審査を「怖いもの」として考えることではありません。

研究対象者を守りながら、安心して看護研究を進めるための準備ができることです。


倫理審査とは?

倫理審査とは、研究を始める前に、その研究が対象者の権利や安全を守れているかを確認する仕組みです。

看護研究では、患者さんや家族、看護師、他職種、学生などを対象にすることがあります。

そのため、研究を行う前に、

  • 研究の目的は妥当か
  • 対象者に不利益がないか
  • 無理な依頼になっていないか
  • 自由意思で参加できるか
  • 個人情報が守られるか
  • データ管理が適切か
  • 結果の公表方法に問題がないか

を確認します。

倫理審査は、研究を止めるためのものではありません。

研究対象者を守り、研究者自身も安心して研究を進めるための確認です。


院内研究でも倫理審査は必要?

院内で行う小規模な看護研究でも、倫理的配慮は必要です。

特に、次のような場合は、施設のルールに従って倫理審査や研究承認が必要になる可能性があります。

  • 患者さんを対象にする
  • 家族を対象にする
  • 看護師や職員を対象にアンケートを行う
  • インタビューを行う
  • 電子カルテの情報を使う
  • 学習会前後で理解度や不安を調査する
  • 院内発表や学会発表を予定している
  • 研究結果を外部に公表する

一方で、日常業務の振り返り、教育活動の記録、単なる業務改善活動などは、施設によって扱いが異なることがあります。

重要なのは、自己判断で「これは研究ではないから大丈夫」と決めないことです。

看護研究としてまとめる予定がある場合や、対象者からデータを集める場合は、早めに指導者や研究担当者に確認しましょう。


倫理審査で見られる主なポイント

倫理審査では、研究の内容そのものだけでなく、対象者への説明や情報管理も確認されます。

1. 研究目的が明確か

研究目的があいまいだと、対象者に何をお願いするのかもあいまいになります。

たとえば、

「学習会の効果を調べる」

だけではなく、

「手術室看護師を対象に、防災学習会前後で災害初動対応への理解度の変化を確認する」

のように、対象者、取り組み、評価したいことを明確にします。

2. 対象者の選び方が妥当か

誰に依頼するのか、その理由を説明できる必要があります。

たとえば、

  • 新人看護師を対象にする理由
  • 手術室看護師を対象にする理由
  • 特定部署だけを対象にする理由
  • 除外する対象者がいる理由

を整理します。

3. 研究参加が自由意思か

研究への参加は、対象者の自由意思でなければいけません。

特に職場内研究では、上司、先輩、委員会担当者から依頼されることで、対象者が断りにくいと感じる可能性があります。

そのため、

  • 参加は任意であること
  • 参加しなくても不利益がないこと
  • 回答しない自由があること
  • 途中で撤回できるかどうか
  • 回答内容が評価や人事に関係しないこと

を説明する必要があります。

4. 個人情報が守られるか

アンケートやインタビューでは、個人が特定される情報を扱う可能性があります。

患者情報だけでなく、職員情報にも注意が必要です。

たとえば、

  • 所属部署
  • 経験年数
  • 職種
  • 年齢
  • 性別
  • 役職
  • 自由記載の内容

を組み合わせると、個人が推測される場合があります。

5. データ管理が適切か

収集したデータを、誰が、どこで、どのように管理するのかも確認されます。

  • データの保存場所
  • パスワード管理
  • アクセスできる人
  • 保存期間
  • 廃棄方法
  • 紙資料の保管方法
  • USBメモリや個人端末の使用可否

を事前に決めておきます。

6. 結果の公表方法に問題がないか

院内発表、学会発表、論文投稿、ブログ掲載など、どの範囲で公表するのかを確認します。

公表時には、個人や施設が特定されない形にする必要があります。

【図解挿入③】
倫理審査で見られる6つのポイント
研究目的
対象者
自由意思
個人情報保護
データ管理
公表方法


研究依頼文とは?

研究依頼文とは、研究対象者に対して、研究への協力をお願いする文書です。

アンケートやインタビューを行う場合、対象者にいきなり回答を求めるのではなく、研究の目的や協力内容を説明したうえで依頼します。

研究依頼文には、次のような内容を入れます。

  • 研究タイトル
  • 研究の目的
  • 研究への協力をお願いしたい理由
  • 対象者の条件
  • 依頼する内容
  • 所要時間
  • 参加は任意であること
  • 参加しなくても不利益がないこと
  • 個人情報の扱い
  • 回答データの管理方法
  • 結果の公表予定
  • 問い合わせ先

研究依頼文は、研究者側の都合を書く文書ではありません。

対象者が「何を求められているのか」「参加しても大丈夫か」を判断するための文書です。


研究依頼文の例文

以下は、職員向けアンケート調査を想定した例文です。

施設のルールや研究内容に合わせて、必ず修正して使用してください。


研究依頼文の例

このたび、当部署では「防災学習会前後における手術室看護師の災害初動対応への理解度の変化」をテーマに看護研究を行います。

本研究の目的は、手術室看護師を対象に防災学習会を実施し、学習会前後で災害初動対応への理解度にどのような変化があるかを確認することです。

つきましては、本研究の趣旨をご理解いただき、アンケートへのご協力をお願いいたします。

アンケートへの回答は任意です。回答しない場合でも、業務上の不利益や評価への影響はありません。

回答内容は研究目的以外には使用せず、個人が特定されない形で集計します。

研究結果は、院内発表または部署内報告で使用する予定です。発表時には、個人が特定される情報は含めません。

ご不明な点がありましたら、下記の研究担当者までお問い合わせください。

研究担当者:〇〇
所属:〇〇部署
連絡先:〇〇


この例文では、研究目的、依頼内容、任意参加、不利益がないこと、個人情報の扱い、公表予定を簡潔に示しています。


同意説明文とは?

同意説明文とは、研究対象者が研究に参加するかどうかを判断できるように、必要な情報を説明する文書です。

研究依頼文と似ていますが、同意説明文では、対象者が判断するために必要な情報をより丁寧に説明します。

同意説明文には、次のような内容を入れます。

  • 研究の目的
  • 研究の方法
  • 対象者として選ばれた理由
  • 協力してもらう内容
  • 予想される負担
  • 予想される利益
  • 起こりうる不利益
  • 個人情報の保護
  • データの保存方法
  • データの保存期間
  • 研究結果の公表方法
  • 参加は任意であること
  • 同意しなくても不利益がないこと
  • 同意撤回の方法
  • 問い合わせ先

対象者が患者さんの場合、職員対象のアンケートよりもさらに慎重な説明が必要です。

また、未成年者、認知機能に配慮が必要な人、弱い立場にある人を対象にする場合は、より慎重な対応が求められます。

倫理指針やガイダンスは改訂されることがあるため、最新の文書や施設の運用を確認することが重要です。厚生労働省は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」を掲載しており、文部科学省も同指針に関する情報を案内しています。


同意説明文の例文

以下は、職員向けアンケート調査を想定した同意説明文の例です。


同意説明文の例

本研究は、「防災学習会前後における手術室看護師の災害初動対応への理解度の変化」を明らかにすることを目的としています。

研究対象者は、〇〇部署に所属する看護師です。

研究方法は、学習会前後にアンケートを実施し、災害初動対応に関する理解度や不安の変化を確認するものです。

アンケートの回答にかかる時間は、1回あたり約5分です。

本研究への参加は任意です。参加しない場合でも、業務上の不利益や人事評価への影響はありません。

回答内容は個人が特定されない形で集計し、研究目的以外には使用しません。

収集したデータは、研究担当者がパスワードを設定したファイルで管理し、研究終了後〇年間保管したのち、適切に削除します。

研究結果は、院内発表または部署内報告で使用する予定です。発表時には、個人が特定される情報は含めません。

同意後であっても、可能な範囲で同意を撤回できます。ただし、匿名アンケートの場合、回答後に個人の回答を特定できないため、撤回が難しい場合があります。

本研究について不明な点がある場合は、研究担当者までお問い合わせください。

研究担当者:〇〇
所属:〇〇部署
連絡先:〇〇


この例文で大切なのは、対象者が「参加するかどうか」を判断できる情報が入っていることです。


匿名アンケートで注意すること

看護研究では、Googleフォームなどを使って匿名アンケートを行うことがあります。

匿名アンケートは便利ですが、「名前を聞かなければ安全」とは限りません。

たとえば、次の項目を組み合わせると、個人が推測されることがあります。

  • 所属部署
  • 職種
  • 経験年数
  • 年齢
  • 性別
  • 役職
  • 勤務形態
  • 自由記載

特に対象者数が少ない部署では注意が必要です。

たとえば、手術室看護師10名を対象にして、

  • 所属部署
  • 経験年数
  • 役職
  • 自由記載

を集めると、回答者が推測される可能性があります。

匿名性を高めるには、次のような工夫が必要です。

  • 必要以上に属性を聞かない
  • 経験年数は範囲で聞く
  • 部署名を細かく分けすぎない
  • 自由記載の扱いに注意する
  • 少人数の場合は集計方法を工夫する
  • 個人が特定されそうな記述は発表時に加工する

Googleフォームを使う時の注意点

Googleフォームは、アンケート作成に便利なツールです。

しかし、看護研究で使う場合は、施設ルールを確認してから使用する必要があります。

特に確認したいのは、次の点です。

  • 個人アカウントで使用してよいか
  • 施設のGoogleアカウントを使う必要があるか
  • 回答者のメールアドレスを収集しない設定になっているか
  • ログイン必須設定になっていないか
  • 回答データの保存先は適切か
  • 共同編集者の範囲は適切か
  • 回答結果を誰が見られるか
  • データの保存期間と削除方法は決まっているか

Googleフォームでは、設定によって回答者情報が収集される場合があります。

そのため、「匿名アンケート」として実施する場合は、フォーム設定を必ず確認しましょう。


Googleフォームの安全性や匿名性については、
「Googleフォームは安全?個人情報保護・匿名性・研究倫理を解説」
も参考にしてください。


データ管理で確認すること

倫理審査では、データ管理についても確認されます。

アンケートやインタビューで集めたデータは、研究終了まで適切に管理する必要があります。

電子データの場合

電子データでは、次の点を確認します。

  • 保存場所
  • ファイル名
  • パスワード設定
  • アクセスできる人
  • 共有設定
  • バックアップ方法
  • 保存期間
  • 削除方法

個人のUSBメモリや私用端末に保存してよいかは、施設ルールを確認してください。

紙資料の場合

紙のアンケートや同意書を使う場合は、次の点を確認します。

  • 鍵のかかる場所に保管するか
  • 誰が管理するか
  • いつまで保管するか
  • どのように廃棄するか
  • 回答用紙と同意書を分けて管理するか

紙だから安全というわけではありません。

紛失や閲覧リスクを考え、保管方法を決めておきましょう。


倫理審査前のチェックリスト

倫理審査に出す前に、以下を確認しておくと安心です。

研究内容

  • 研究目的は明確か
  • 対象者は妥当か
  • 研究方法は具体的か
  • 対象者の負担は大きすぎないか
  • 研究期間は明確か
  • 結果の公表範囲は決まっているか

対象者への説明

  • 研究依頼文はあるか
  • 同意説明文はあるか
  • 参加は任意と書かれているか
  • 参加しなくても不利益がないと説明しているか
  • 同意撤回について書かれているか
  • 問い合わせ先を示しているか

個人情報・匿名性

  • 個人が特定される情報を集めすぎていないか
  • 属性項目は必要最小限か
  • 少人数でも個人が推測されないか
  • 自由記載の扱いを決めているか
  • 発表時に個人が特定されないか

データ管理

  • データの保存場所は決まっているか
  • アクセス権限は決まっているか
  • 保存期間は決まっているか
  • 削除方法は決まっているか
  • 紙資料の保管方法は決まっているか

よくある疑問

アンケートだけなら倫理審査はいらない?

アンケートだけでも、対象者からデータを集める以上、倫理的配慮は必要です。

倫理審査が必要かどうかは、研究内容、対象者、データの種類、公表予定、施設ルールによって異なります。

自己判断せず、指導者や施設の研究担当者に確認しましょう。

匿名なら同意説明はいらない?

匿名であっても、研究の目的、参加の任意性、回答しなくても不利益がないこと、データの使い道などは説明する必要があります。

匿名であることと、説明が不要であることは別です。

職員対象なら個人情報の心配は少ない?

職員対象の研究でも注意が必要です。

少人数部署では、部署名、経験年数、役職、自由記載などの組み合わせで個人が推測されることがあります。

患者情報だけでなく、職員情報も守る対象として考えましょう。

学会発表しないなら倫理審査はいらない?

院内発表のみであっても、対象者からデータを集める場合は施設ルールの確認が必要です。

また、最初は院内発表だけの予定でも、後から学会発表や論文投稿を検討する場合があります。

研究開始前に、公表範囲をできるだけ整理しておきましょう。


まとめ

看護研究では、研究テーマや方法だけでなく、倫理的配慮がとても大切です。

倫理審査は、研究対象者を守り、研究者自身も安心して研究を進めるための確認です。

特に、

  • 研究目的は明確か
  • 対象者の選び方は妥当か
  • 参加は自由意思か
  • 断っても不利益がないか
  • 個人情報は守られるか
  • データ管理は適切か
  • 結果の公表方法に問題はないか

を事前に整理しておく必要があります。

研究依頼文や同意説明文では、研究者が伝えたいことだけでなく、対象者が参加するかどうかを判断するために必要な情報を示します。

また、匿名アンケートであっても、部署、経験年数、役職、自由記載などを組み合わせると個人が推測される可能性があります。

「名前を書かないから大丈夫」と考えるのではなく、対象者が安心して協力できる形になっているかを確認しましょう。

倫理審査は難しく感じるかもしれませんが、基本はシンプルです。

研究に協力してくれる人を守ること。
参加しない自由を守ること。
集めた情報を適切に扱うこと。

この3つを意識すると、研究依頼文や同意説明文、データ管理の考え方が整理しやすくなります。

研究を始める前に、必ず所属施設の倫理審査ルールを確認し、指導者や研究担当者に相談しながら進めましょう。


関連記事


参考資料

  • 厚生労働省「研究に関する指針について」
  • 文部科学省「人を対象とする生命科学・医学系研究」
  • 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針
  • 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス

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